第6話
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「ごめん、姉さん」『それは大丈夫だけど、タカラは大丈夫?』「うん。ちゃんと避けられた」『そっか。流石私の弟!』魂だけ入り込んできたキヨラが、自身の中でニコニコと笑っているのがわかる。自分の体なのに別物に感じてしまうのは、仕方がないだろう。『それで、敵は?』「なんか、いっぱい」『いつものね』キヨラの言葉に頷く。『全く。キリがないわ』と呆れ声を出す姉にタカラは心の底から同意しつつ、半身を引いた。既に壊れかけているのだ。ドライヤーガンでの戦闘は出来ない。それをわかっているのは、自分だけではない。「くそっ!
よくわからねぇけど、行くぞ!」「おう!
ぶっ潰してやんよ!」体制を立て直したらしい彼等は、再び構えると武器を手に襲い掛かって来る。それを見て、タカラはゆっくりと深呼吸をすると足に力を込めた。
ビュンッと振られたバットのような得物を頭を下げることで避け、タカラは正拳突きをかました。拳に確かな感触が伝わる。ほっと息を吐く前に脚を踏みしめ、後ろから襲い掛かってきていた人間を蹴り上げた。ガッと骨の感触がし、上手く顎下に当たったのだと悟る。腹部を殴られ気絶した敵を投げるように振り払い、別の敵へと叩きつけた。殴っては蹴って、蹴っては投げを繰り返していく。幼少の頃から刷り込まれてきた体術は、ドライヤーガン戦士の体になった事でその真価を発揮するのだ。タカラはドライヤーガンを使う前に、瞬く間に残党たちを伸してしまった。山のように積み上がった彼等にドライヤーガンを打ち、妄執となった彼等を浄化する。その様子を見送って、タカラは変身を解いた。キヨラの魂がゆっくりと抜けていくのを感じつつ、どっと降りかかってくる疲労にタカラはしゃがみ込んだ。「……疲れた」だからあの変身はやりたくないのだ。……とはいっても、やらないと妄執を退くことが出来ないのだから、仕方がない。
少しだけ休憩しよう、と壁にもたれかかる。空が青い。ぼうっとしていれば、不意に人がこちらへ来るのを感じた。地べたに座り込んでいるなんて変な事を言われそうだと思いつつも、顔を上げるのも億劫だ。しかも、立ち上がるための足に力は入らない。……仕方がない。とりあえず転んだという事にでもしようかと思っていれば、その人は自分の姿を見ると「ゲッ」と声を上げた。
「……タカラくん」「……なんでいんだよ」目の前まで歩いてきたのは、大学帰りらしいトオルだった。顔を嫌そうに歪める彼女は、どこか焦っているようにも見えて。
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