第5話
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「ねぇ。アンタら、その“ガキ”に対してマジになってんの、ダサいと思わないわけ?」「あ゛ぁ!?」「このクソガキッ!
何言ってやがんだ!」「だからさ……はあ……。もういいや」きっと何を言っても無理なのだろう。そんな事を感じつつ、タカラは足を進めようとした。しかし行く先を塞ぐ彼等に、タカラは足を止めざるを得なかった。嫌々顔を上げれば、青筋を立てた男たちの顔。……どうせ彼等も今まで来た人間と同じ、『そらうみ』と『もっともすみ』の残党なのだろう。よくもまあ、長い間……。呆れに声を掛けるのも面倒に思っていれば、男たちはいろいろと喚き散らすと共に一気に襲い掛かって来た。慌てて身を翻せば、顔の横を拳が通り過ぎる。心臓が恐怖に震えた。いきなり殴って来るなんて、危ないじゃないか。大人の癖にズルいな。
「チッ! 生意気な目で見てんじゃねーよ!」「それはジイシキカジョーってやつじゃ……」「うるせぇ!
やっちまえ!」バタバタと音を立てて襲い掛かってくる敵たちに、タカラはもう言葉だけであしらう事は無理だろうと悟った。ランドセルを下ろし、中からドライヤーガンを取り出す。ボロボロのgunは見た目はよくないものの、弱々しくも常人には見えない力を纏っていた。「これは使いたくなかったんだけど……」壊れかけで少し硬いスイッチを入れ、タカラはgunを高く掲げた。——刹那、光り輝くgunに襲い掛かっていた男たちはあまりの眩しさに目を覆った。悲鳴や困惑する声が聞こえる中、タカラは自身を包み込む浮遊感に目を閉じていた。
タカラの体を瞬く間に覆った光は、彼の体を一気に変えていく。細く無骨だった四肢はしなやかなものに変わり、髪はゆったりと柔らかいものに変わっていく。まるで変身でもしているかのような光景は——否、確実にタカラの体を変えていた。光が弾け、タカラの体が徐々に見えてくる。その姿はまさに“美少女戦士”と言っても過言ではなかった。
「なっ……!」「確かこいつは男だろ?!」「そうだったはず!」「あいつら、騙していたのか……!?」騒ぎ出す敵たちに、タカラは呆れた顔を向けた。……それもそうだろう。自分でもどうなっているのかはわからないのだから。だがしかし、ドライヤーガンは自分を“戦う素質がある”と判断したらしい。タカラの体に前回の持ち主——キヨラの魂を入れることで体を女体にし、“戦士”として適用するようになるのだ。どういう仕組みなのかは自分たちにはまだわからない。けれど、姉と一つになっているこの感覚は未だ慣れない。
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