略奪の世界
仲仁へび(旧:離久)
第1話
その世界は略奪の世界だ。
なぜなら、その世界は、多くの犠牲を生み出しながら生きながらえ続けていたからだ。
その世界のエネルギーは枯渇寸前だった。
それは、多くの人達が後先考えずに豊かな生活を送っていたためだ。
その世界の住民達は、気が付かない。
自らの生活を支えているエネルギーが、枯渇寸前だと言う事に。
知っているのは一部の者達だけ。
その者達は、そのエネルギーをなんとか得ようと考えていた。
エネルギーを生み出す方法は難しい。
しかし、すでにあるところからとってくるのは簡単。
ならば、と人々は後者を選ぶ事に決めた。
とうとうエネルギーがなくなる、と言った時に、人々は他の世界に目をつけた。
この世界にエネルギーがないならば、他の世界から奪えばいいと武器を手に取り、兵器の引き金を引いた。
そして、多くの世界からエネルギーを奪っていった。
だから、彼等の生活は、エネルギーがある限りずっと豊かだった。
エネルギーを奪われた世界は、貧しい環境になっていって、人々がいきていけなくなったが、そんな事はかえりみられる事がなかった。
しかし略奪された世界はそのままでは終わらない。
ただ、奪われるばかりではなかった。
奪われるといった時に、そのエネルギーに細工を施したのだった。
それは、呪い。
人々の負の感情。
それは、穢れ。
人々の憎悪の感情。
エネルギーを奪った者達は、その中に含まれた物に気が付かない。
気が付かずに、自分達のものとしながら、ずっと豊かに暮らしていった。
そして長い時間をかけて、エネルギーに含まれた負の感情が、ゆっくりと人々の精神を蝕んでいった。
彼等は数十年後に、大きな争いを起こすだろう。
その争いの火をおさめる事はない。
彼等の精神は、その頃には致命的なほど負の感情に侵されているだろうから。
もしも、まさに今。
略奪者である彼らが、自らの過ちに気が付いて、その行為を止める事ができれば。
破滅の未来は防ぐ事が出来るだろう。
しかし。
「お父さん、お母さん、エネルギーってどこから来てるの?」
「他の子には内緒だよ。こっそりおしえてあげる。それはね、別の世界からだよ」
「私達より弱い人達が住む他の世界から奪ってきているの」
「それってよくない事じゃないの。人からものをとったら駄目なんだよ」
「大丈夫、他の星の人達は同じ人じゃないからさ」
「そうよ、気にしなくてもいいのよ」
それはおそらく、無理な話なのだろう。
略奪の世界 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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