第5話 人材ハンター
05 人材ハンター
父:高野貞吉の視点
近ごろは、息子の
父である貞吉は思うのだ、何かが明らかに違う、成長速度が五十六なんかとは、けた違いに早い気がするし・・・。
言葉も覚えるのが異常に早かった、たちあがるのもはやかったし・・・。
家の手伝いにと、裏山で芝を取ってくるようにいったものの、とってくる量も半端ではなかった、
しかも、ある時から獲物まで取ってくるようになった、弓のようなものを自作し、山刀を装備し、山に入っていくようになった。それはすでに一端の猟師であった。
だが、獲物は矢で獲っているものはほとんどない、鳥くらいである。
あきらかに、槍のようなもので突き殺している、傷口は明らかに槍である。
高野家は武士の家系、だから槍もあったのだが、槍は、持たしてはいない。
当たり前のことなのだが。
しかも、毎日獲物を持ってくる、村の腕利き猟師でもそんなことはできない。
一体どういうことなのか?とても不安になるのだ。
まあ、おかげで食べきれない分の肉は、商人に卸して、現金を手に入れることができる。有難いことだ、この真相を深追いすれば、どうなるか?
貞吉の脳裏には、鶴の恩返しの話がう浮かぶ、知ってしまえば、獲物が届かなくなるのではないか?不安に駆られるのである、まずは食べることを優先しようそう考えているときだった。
そんな時である、五十六と九十九が獲物を背負って、玄関に入ってくる。
「九十九どうやって、毎日獲物をとってるんだ?」と五十六。
いかん、五十六それをきいてはならん、貞吉はそう口走ろうとした。
「うん、実は、俺には先生がいてね、先生が親切に手助けしてくれるんだ、とった獲物も分けてくれるんだよ」と九十九。
先生、え?。
「先生って?」と五十六。
「うん、隣町の山口
「そんな、親切な人がいるんだな、父ちゃん、お礼にいかなくちゃな」と五十六が此方に顔を向けた。
「ああ、そうだな、そうだったのか、おかしいおかしいと思っていたんだ、毎日毎日、獲物をとってくるからな。普通じゃただの子供に、鹿や猪なんか獲れる筈がないと思っとったんじゃ。」とぎこちない笑顔を浮かべる貞吉。
「そんなこと、無理にきまってら」と九十九。
「山口さんとこに今度、お礼に行かんとな」と貞吉。
「父ちゃん、山口先生はそういうのは嫌いな人だから、行かなくていいって、その代わり、僕が先生んちの芝集めなんかしてお手伝いしてるから大丈夫だよ」と九十九。
このころから、平気で人をだます技術が半端ない。
「そうか?でももらいすぎじゃないか?」
「大丈夫、先生は一流の猟師だから、あっという間に、獲物とっちゃうから。気にするなって言ってたよ」
貞吉はそうかそうかとうなずくのであった。
・・・・・
なんか、すらすらと言い訳ができるスキルでもあるのか、それとも騙され安いのか、二人はうんうんと納得してくれたようだな。
やっぱり、やばかったみたいだな。
と一人ごちる九十九がいた。
「今日は罠猟をやってみるぞ」
トラばさみをもった山口がいる。
「お前の槍はかかった獲物にとどめを刺す道具だ、くれぐれもそれで獲物とるというのは、常識ではないので気をつけろよ」
「はい先生」
罠を仕掛けに、山中を歩き回る、その間に、食べることができる木の実、キノコなどについても教わっていく。
夕方までそれを繰り返す。
「結果は明日、見回りすることになる」
「槍の出番ですね」
「そうだ、で?槍は?」
邪魔なので、とっくにしまっていた。
「あっ!沢に置いてきたので、とって帰りますね」
「そうか」山口の顔が俺をのぞき込んでいる。
「先生、嘘をつきました」
「そうか」
「実は、他言無用にお願いしたいのでありますが、私は、ある目的を帯びてこの世界に生まれたのであります!」とオカルト発言を発する俺だった。
・・・・・
山口は
この子供、初めから人間離れしていることははっきりしていたが、何を言い出すのか?
「では、先生説明しますので、目を閉じてください」
「何?」
「言葉では、数時間かかります、そこで、映像でニュアンスを伝えますので」
「にゆあんす?」
「目を閉じてください」
山口が目を閉じる。
映像が始まる、きれいな島を飛行機というやつか?飛んでいる、見たことがない形だが。
低空で編隊を組んで飛ぶ海軍航空部隊である。
真珠湾内に侵入する、巨大な敵艦がフォード島に接岸している、魚雷が放たれる。
轟音と水柱、火炎が巻き起こる。
艦爆が急降下爆撃を行い、零戦が地上の航空機に機銃を放つ。
それは、真珠湾攻撃の映像であった。
真珠湾奇襲を成功しはするが、場面はミッドウェー海戦に切り替わり、帝国海軍空母が次々に炎上し沈没していく。
画面は、沖縄上陸作戦へと進み、洞窟が火炎放射器で焼き尽くされていく。
さらに、東京大空襲、都市が焼け野原になり、最後はとどめの原爆、巨大なキノコ雲が立ち登る。
あまりな悲惨な状態に、涙が止まらなかった。
焼け焦げた死体、大やけどでうめく人々・・・
余りといえばあまりにもひどい状態だった!
この映像は、目隠し女神が戦争啓発用?いや人員勧誘用にアカシックレコード内の映像をまとめたものであり、俺が、魔法技術により相手の脳に直接映し出すことができるようにしたプロパガンダ放送の一種である。
4K放送よりも精密描写でなおかつ音は完全サラウンドと没入感が凄い!と何かの放送局のような言い回しがぴったりくる映像に仕上がっている。
なおかつ、現実に起こった事の記憶であるので、説得力が凄い!
人材リクルートの戦略を夢の中で、俺と目隠し女神で練りに練ったものであった。
「先生、大丈夫ですか」
「う」俺は涙をぬぐった、映像は終わっていた。
「先生、これからさっきのような戦争が起こります、俺は、原爆投下の阻止のために、この世界に使わされた者といえるかもしれません」
「原爆!」
「そうです、原子爆弾です、最後に巨大なきのこ雲が起こっていたでしょう、あれ一発で十万の人間が一瞬に死にます」
「なんだと!」
「先生、俺は、原爆投下阻止を成功しなければなりません、力を貸してください」
「俺は、ただの猟師だ」
「先生、俺はただの子供ですよ」
「お前がただの子供なはずはなかろう」
「それでも、一人でしかない、西欧列強相手には荷が重いですよ、できることからやるしかありませんがね」
「何ができるというんだ」
「わかりません、しかし、千里の道も一歩からです、とにかく仲間が増えるように頑張りましょう」
「おい、九十九、俺はまだ仲間になるなどといった覚えはないぞ」
「え?」
「冗談だ」山口は笑顔になった。
「先生、よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」俺たちは握手をしっかりと交わした。
こうして、山口
しかし、まだ俺たちは2人である。
1896年、明治29年のことである。
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