第2話 出発
第2話 出発
「じゃあ、原爆阻止作戦の内容は、米国投下の原爆2発から4発程度を阻止するという条件でいいな?2から4の理由は阻止されれば、必ず次を実施するであろうから、4発までは阻止するという条件でいいな?」
「うまくいったら、キスしてあげちゃうからね!」
邪悪さに満ちている!
いや結構だ!絶対に何かの呪いを受けそうだよ。
「あとさ、古いやつでいいから、ラジオも一つ入れといてよ、一人だと何かと、寂しいしさ」
「もう、本当にめんどくさいやつよね、わかったわよ、あと何かあったら、近くの神社にいって私を拝むのよ、連絡を取る方法ね、でも無理な注文は受付不可だから」
「じゃあ、いいぞ目隠し女神!」
「名前くらい覚えんか!死んで来い!」
どかっ、俺はけられて穴に落ちた。
ぐるぐる、トンネルの中を俺は、ぐるぐると落ちていく、そして気を失った。
光がぐるぐると回転していく、ぐるぐるとぐるぐると回転していくのである。
明治25年9月9日午前9時9分、俺は、山本五十六の弟として、その彼の誕生から9年後にこの世に生れ落ちることとなった、この時、俺の新しい父親は65歳であり、高野六十伍と名付けられそうになったのだが、その名前は回避できた、そして、俺、高野九十九(と命名される)の長い闘いが始まろうとしていた。
ちなみに、山本五十六の山本姓は、名士山本家を相続したことによる改姓で、山本五十六の元々の名前は、高野五十六である。
俺は、約束されたものがあるかどうか確認しようとしたが、いかんせんどうしようもなかった、赤子だからな。
あとは退屈だった、そして腹が減った、とにかく腹が減った、なんか食わせてくれ!
「よく泣く子だね」母や兄弟からそういわれることになってしまったのである。
生後10か月で何とか立ち上がることに成功する。
そして、一歳、俺は初めて、神社に行き、祈ったのである、「何か精の付く食べ物をくれと」
スキル収納ボックスに自然薯が届いた。
女神貴様!どうやって食えというんだ、赤子が自然薯を母親に渡す図がどうにも思い浮かばない、どうやって説明するのだ!掘ったと言い張るのか!仕えん奴め!
新潟県長岡市の貧しい山村である、自然薯などどこにでも生えているだろうが!と毒づいてはっと気づく、そうか、自分で取ればいいのだ!
しかも、一歳では、自然薯を調理することは難しい、まあ、収納ボックスは時間停止機能があるので劣化はしないがな。
2歳、ついに体に自由がもたらされる、乳飲み子から子供に昇格した、俺は外を走り回れるようになった、その中で、薄いながら魔素を感じる術を手に入れた。
魔素は、日本の場合では神気が非常に似ている物質であることを発見した、ただし、非常に薄い、これでは、何らかの行為を行うには足りない、常時蓄積し、圧縮をかけないと使い物にならないではないか!なんということだ!
薄い神気を全身で吸い込もうとするとなぜか太極拳の運動ににてくることに最近気づいたのである。
そのことで、近所で変な踊りを踊る子供という目で見られることになる。
・・・
俺は腹をすかしていた、高野家は貧乏だったのだ、食うにこまるほどではなかったがな。
しかし、俺の体は、通常の人間の数倍の食料を必要としているようだ、燃費が悪いのか?自然薯より肉が食いたい、肉が食いたい、女神!肉送れ!
神社でほぼ日本語で発音不可能な音の女神に再三要求してみたが、肉が送られてくることはなかった。
肉送れ!伝言は無視される、精進ものでないとだめなのか?
3歳、俺は、神社で神に祈る、槍をくれ、ライフル銃をくれ、刀をくれと。
次の日、朱塗りの槍と日本刀大小が収納に送られてきた。
「くれぐれも、人を殺さぬように 女神」
キスマークのついた紙きれに、おのれ!女神!村田銃はどうした!俺は吠えたのだ。
山で採った風を装い、家で自然薯を土間に広げると母親が驚いた顔をした。
食料をとってきたことに驚いたに違いない。
実はそうではなく、自然薯を掘るには途方もない労力がいるのであるが、長い折れていない芋が出てきたので皆が驚いた、いや不信を感じたのである。
「内の子は変だ、この年で自然薯が掘れるわけがない、鍬も持っていないのに、どっかから盗んできたのではないだろうか」母親が驚いてそう考えていることを俺はついぞしることはなかった。
4歳、周りから奇異の目で見られ始める(もちろん俺はそんなことに気づきもしなかったが)、兄の五十六が小学校に行っている俺は、薪を取りに山に入るようになったが、せっかくなので、獲物を得ることにしたのである。
背中に背負子と弓矢(これもお願いしたもの)を背負い山に入る4歳の子供、この時代でも妙にシュールである、身体強健(スキル)のおかげで、すこぶる健康である、ただし、腹のすき方が半端ではないのが玉に瑕である。
帰りには、薪よりも、鳥やウサギを何匹も背負っているである、猟師でも毎日獲物を得ることは難しい筈だが、俺は毎日、確実仕留めてくる。
気配察知(スキル)のおかげか、獲物を発見しやすいし、偏差射撃(スキル)のおかげか獲物通過地点に矢を打ち込むことができるようになっていた。
そして、それをむさぼり食う子供、五十六の弟は、とんでもねえ奴だ!
村の連中は震えあがったいたという。
5歳、薪はいいから、獲物をとってこいとの親からの指令である、俺が弓矢に、脇差、山刀、獣の皮をきて、山に入っていく姿は、すでに立派な山賊である、体つきは肉食のおかげで、すこぶる成長が良い、同世代の子供より頭2つは抜けている感じがする。
同世代の子供たちと遊ぶことはほとんどないが、すでに逆らうことをあきらめた感を感じる。
すぐに、イノシシの足跡を発見!今日は、ついにイノシシをゲットする覚悟である、今までは、危険のない鳥、ウサギで安全策を取ってきたが、すでに、十分に体が反応し、何らかのスキルの影響か、武道の素質があるのか、対戦できるレベルにあることは推測できたからであった。
ぬたば独特の臭気が漂ってくる、イノシシはそこでゴロゴロを体をこすりつけていた。
ザッザザ藪をよけながら、俺は収納から朱塗りの槍を取り出しながら疾走する。
収納ボックスから槍は突然出現する、イノシシには何が起こっているのかすらわからないであろう、一瞬にして、後頭部に槍を突き刺され絶命した。
身体強化(スキル)により通常の人間より相当早く走ることができる。
腹を割き、内臓を取り出す、大きく切り裂き血抜きを行う、血抜き後は獲物を適当に切った木の枝二本に乗せて、水場を目指して引きずっていく、数十キロのイノシシを運ぶのは、今の体では骨が折れる、しかし、肉食を行わなければ、体を大きく作ることはできないのではないか?当時の日本人には、肉食が浸透していない、栄養状態もそれほど良くないため、体が小さいのが普通であった。
川原で、イノシシの腹に大きな石を入れ、それを沈めて、冷やす作業を行う。
冷えるまでの間に、火を起こしておく。
「案外簡単にいったな」一人ごちる俺。
それにしても、肉を食べるためには、いちいち狩りを行わなければならんとは、非常に面倒なことだ。
いずれ、食料関係改善のため、豚、牛を飼わねばな!
5歳の子供が難しい顔で宙をにらむ姿はシュールである。
ある程度火が起こったところで、イノシシの片足を切り取り、皮をはぎ焼き始める、残りは再び水の中へ入れる
ぱちぱちと薪がはぜる、ジュウジュウとモモ肉が音を立てる。
味付けは、塩のみであるが、よだれが、湧き上がってくるのを止めることができない。
イノシシの場合は、よく火を通さねばならないが、待ちきれずかぶりつく。
こんな肉の塊を食べるのは、生まれて初めてであった。今生では。
モンスター〇ンターの上手に焼けました的な感じである。
足一本を食べきり、人心地付くと、沈めた肉を背負子に背負おうと思い、ふと考えた
「ステータスオープン」なぜか、ふと頭に言葉が思い浮かんだのである。
小さなウィンドウが開く
「システムが生きてる」システム?自分で言いながら、自分に疑問が浮かぶ。
何らかの干渉のせいか、記憶があいまいである。
しかし、使い慣れ親しんだであろう習性か、次々とウィンドウを開いていく。
スキル 無限収納(制限あり)ほかにもスキルが存在するが、灰色になって死んでいる、しかも、文字が読めないように消されているものすらある。
「どういうことだ?」
スキルは鑑定、小型収納、世界共通言語、回復魔法のはずだが。
それが、女神の約束したものであるはず、確かにそれらのスキルはアクティブになっているが、いくつも空欄があり、そこには、明らかに何かのスキルが存在すると思われるような配置である。
「奴ならば、そういうことをやりそうだな」
そうなのだ、俺にはどういうわけか、ほかのスキルが存在するのであろうことがわかる。
しかし、あの女神は、それを妨害しているということが推測されるのである。
人に仕事を頼んでおいて、どういう了見か!俺は一瞬で頭にきた。
だが、いくら激怒しても事態が良くなるわけではない。
まあ、肉を家に持って帰らなければならない。
ぷりぷり、しながら肉を引いて帰ったら家族がすごく喜んでくれたので、その夜は楽しくボタン鍋を食べることができたのだった。
ああ、収納に入れてくればよかったんだ!
寝る前にそのことに気付いたが、もう遅い!
女神め!いずれ目にもの見せてくれるわ!すでに戦国武将のように空をにらむ5歳の幼児はやはりシュールであった。
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