第1話 条件交渉
01 条件交渉
ブブー
女神が変な声を上げる。
やはり変な女神のようだ。
「エヌジー」
「貴様!」すでに敬意は遥か彼方へと消え去ってしまっていた。
「歴史の主要登場人物にはなれません」と変女神。
「ふざけんな!主要登場人物じゃなきゃ、戦争指導なんかできるはずないだろ!」
「入れ替えるとその魂が浮いちゃうじゃない、その処理が大変なのよね」
あまりな物言いにこめかみの血管が膨れ上がる。
ちなみに今の俺に、こめかみが存在するか、確認できていない。
自分がどのような姿をしているのか、確認できていない、番茶を飲む手はあるようだがな!
「俺の魂ならいいのか!」
「いいんのよ、あんたのならね」
「なんだと?」
「うそうそ、あなたは特別なの」となだめに入る女神。
こいつ、絶対俺をなめてる、目の部分だけが目隠しされているが女神はにやにやしている。
口元が綻んでいる。
「ところで、なんで目が隠れてるの?」
「それは秘密!なんだけど教えてあげるっ」
「いや、いいわ、じゃあ、俺はふつうに生まれて、頑張れ見たいな?」
それはお願いしている立場の人間がとる立場なのか?とおもいつつ、女神の主張を退ける。
「じゃあ、もう地獄行きでいいわ、めんどくさいから」
「そんなぁ」
「条件が整わないといけないし、行きたくもない、そもそも原因者として自覚が足りないのではないか?それと、ある程度の条件は飲んでもらわないと、そんな戦争時代に行きたくないので、よろしく。普通の人間が戦時下に行きたいと思わんだろ」
「大丈夫よ、そこはかんがえてるから!あなたは、あの山本五十六の弟として生まれるのよ、完璧でしょ!」
女神がどや顔で胸をそらす。
「何がだ!」
「え?」
「え?じゃないだろ、それで?」
「それで?」
「お前と漫才する心の寛容さは持ち合わせていないのだが?だからどうしたのだ、弟だからどうした、その人は戦争途中で米軍機に落とされて死ぬんだが、それでどうした」
「だから、そのう、山本五十六の弟で、誰もが戦神のように敬うのよ。その人のこと」
「死んでからだろうが、もうその時日本は負けかけてるだろう、どうするんだ、死んだら敵討ちとか言って、選挙に出るのとは違うだろ、日本の政治家にでもなれとでも?
もう、その時は選挙なんかやってる場合でもないし、軍事政権下の話だから、俺が介入できる隙はどこにあるんだ、ええ」
山本五十六が軍神のごとく扱われるようになるのは、本当は、真珠湾攻撃後のことである。
俺は、ついに悟った、この女神はだめだと、初めからうすうす感じてはいたがな。
「では、ギフトのほうはどうなのだ?何か、戦争で役に立つスキルとかがいいと思うんだが?例えば、レーダーの開発する技術とか、なぜかミサイル潜水艦が日本の沖に表れて、使えるようになるとかそんなのはないのか?」
「え?」
女神は完全に固まってしまった、やはりだめな奴だ!これは転生物でも相当だめな奴だ。
決まりだ!このパターンは欲しいものは女神という最悪パターン、どっかで見たアニメを思い出す。
冷汗が流れる、コメディーに行くのか!それも転生ものでも人気のない方面のIF戦記だと!
「おい、貴様自ら、俺に付いてきてサポートするつりか」と俺。
「それは、規則違反でーす、ついでにオーバーテクノロジーも持っていけません」と女神。
「では、スキルとかギフトは何がつくのか」いわゆる転生物では、必ずスキルやギフトなど特別なボーナスを受けられるのは常識中の常識である。
ただし、近ごろは、何もないみたいな設定もあるようだがな。
「えーと、だから、山本五十六の弟という、ギフト?」
「馬鹿野郎!五十六さんが軍神とか言われるようになるのは、真珠湾攻撃で成功してからなんだぞ、そのおとうとうなんてそんなものでどうにかなるか!」
目隠し女神のかおはなんだか泣きそうである。
こいつ、よほど馬鹿なのか?それとも相当出来損ないなのか?
いやな感じが倍増しに増えていく、こういうやつは、最後に逆切れを起こすのだ。
いただけるものだけでも、いただいていかなければ、こういう場合、送り込まれれば、それ以上サポートを受けるのはほぼ不可能である。
なぜか、急に計算高くなる俺。
「人材及び資金、秘密兵器、スキル、ギフト何でもいいからありったけ、規則内で与えてくれ、とにかくありったけだ、お前の言っていることはギフトでもなんでもない」
これから、戦争するのだ、なんでもかんでも必要になる、第2次世界大戦は総力戦なのである。
「人材は、現地調達で、資金は100万円、秘密兵器はなし、スキルは身体強健、あと神の加護でどうかな?」と女神。絶望的な状況であった。
目隠し女神の顔は今にもくずれそうなほど笑顔になっている。
正直、邪悪ささえ感じる、こいつほんとに女神なのか?神であっても、悪神、邪神、異界の神など様々なものが存在するのである。
「それじゃあ、とても無理だ、人材は必須だ、俺一人でなにができるというのか?」
「大丈夫よ、そこは私の加護があればかなりの人間があなたに信頼を寄せるわ、すごいでしょ、私って、やっぱり罪な存在ね」となぜか自己肯定を始める馬鹿女神。
頭がいかれてやがる、信頼をよせる?かなり?とても曖昧だ。
「資金100万が多いか少ないか知らんが、もっと必要だ、1000万くらいは頼む」
どれくらいの価値は知らないがとにかく吹っ掛けることにする。
「偽札でも作りなさいよ、あんたは他の人間より器用な奴になるんだから、できるはずよ」
「できるか!あほか、いきなり犯罪者で捕まって委員会になってどうする」
そもそも、輪転機や原版、紙、インクを用意してくれるのか。いやあればできるかも知れない。
「わかったわよ、1000万円ね?ほんと、カネに汚い人間よね、嫌われるわよ、私のおこづかいが減っちゃうじゃない」
どうもこいつは人にものを頼む態度を知らないやつのようだ。
「秘密兵器が無理なら、AK47自動小銃と弾、それに迫撃砲と弾、あと10式戦車、なんか頼みたい」
「ブブー、そんなに無理よ、銃ぐらいにしといてよ、あんた殺人鬼でもするつもりなの」
こいつ俺が戦争しに行くことがわかっているのか?
しかし、銃はゲットだ、ちょろいやつ。
「替えのも必要だし、修理不可だから、10丁くらい頼むぞ、あと弾もたっぷりな」
「スキルは、世界共通言語、無限収納、防御魔法、攻撃魔法、鑑定くらいは必須だろ?」
「むむむ、無茶いわないで、小型収納、鑑定くらいが限度よ、大体地球は魔素が希薄だから、攻撃魔法なんて使えないわよ、知らないの?」
知るわけがあるか、しかし魔法あるんだとおもいながら。
「回復魔法はどうかな?」
なんでも交渉だ
「じゃあ、少しくらいよ、吹き飛んだ手足をもとに戻すなんて無理だからね
少し治る程度よあんまり期待しないでね」
「じゃあ、条件も整ったし、行ってもらうわよ!」
女神のよこしまな笑顔がとても印象的だ、いっそここまで邪だとすがすがしい。
「いやいや、ちょっと待ってくれ、行く条件は詰めたけど、俺自身に対する報酬は何になるのか、聞いていないんだが?ちょっといって、原爆投下阻止を行ってくれってわけじゃないよね、成功の暁には、神格をあたえられるのとか、なんかあるよね?」
「いちいち、めんどくさい男よね、戦争できるし、いいじゃない、男って戦争好きでしょ?
いつも、手あたり次第に戦争してるんだから、成功したら、付喪神たちから、喜ばれるわよ、ほんと」
「え?付喪神が喜ぶ?付喪神に喜ばれるとなんかいいことあるわけ?」
「感謝されるって、気持ちいいじゃない?私感謝されるの大好きよ!それが信仰じゃない」
「人間なんだからそんなものいるか!もっと直接的なものが欲しいのだが?
ひょっとして、自分が付喪神に感謝されるために俺に仕事を背負わせてないだろうな?」
ギク!目隠し女神の顔が引きつる
それから10分、女神が今回の任務の意図を自白する
曰く、原爆攻撃により日本にいる相当数の付喪神(物にとりついた神)が消滅する、今回これを阻止するために、下級女神(本人は認めていないが)に上層部より命令が下ったようである。
いやいや、そんなことより、俺の成功報酬は?
俺が、もっとも会いたい魂を、その世界で召喚してかくしておくので探せば会えるということに決定する、本当はそんなことは不可能らしいのだが。
任務をやりつつ、魂探しとは、こいつどこまで上から目線なんだよ!
毒づく俺がそこにいた。
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