12.暖房を消すか、労働を強いるか

 さて、どうしようか。そう思いながら答えは即決、とっくに決まっているのだが。

 ピッ、とボタンを押さずにきびすを返す。今日は珍しく暖房を消さずに出かける。なぜかって?外出先がスーパーだからだ。

 エアコン代は、こまめにつけたり消したりするよりも、つけっぱなしの方が電気代が浮くって誰か彼かが言っていた。電源を落とす作業が最も電気を食うらしい。細かい算出はしたことがないが、スーパーに出かけるくらいであれば、つけっぱなしにしていくのが常である。もっとも、夏場はつけずに出かけるなんて修行は絶対しないが。冬は、帰ってくるともう大変暑い。私が暑がりなのと汗っかきなのとが相まって帰宅直後はもう気持ちが悪くてマフラーやらコートやらを投げ捨てるように脱ぐ。そのため暖房も消したくなるのだが、汗が引くころになると再び凍え始めるので結局短時間でつけることになる。そこでもっとも効率的なのが、設定温度を著しく下げた状態にして出かけることである。ようやく慣れた一人暮らしの中で収穫した果実の一つである。

 数時間単位で出かけるときは一瞬逡巡するものの、結局消すことが多いかもしれない。一度正確な数値を出した方が早いし悩むことに脳内を割かなくて良いのかもしれないが、根っから文系の私にはそっち(計算)の方が苦行である。まあ、「文系」を言い訳に使っている自覚はあるのだが。

 と、いうわけで今日も元気にスーパーに足を運ぶのである。

 いつものラインナップ+αを持って坂を登り切り、ようやく辿り着いた部屋が暖かいと、萎える。夏場は、エアコンが効いた涼しい快適空間へ誘われるが、冬場は暑いのにサウナに来たような感覚になるので一種の地獄である。キッチンとリビングの間にあるスライド式の仕切り戸を開け放しておかないと、熱気がリビングに溜まってしまう。本来心地良いはずの暖気もこのときばかりは恨めしい。外が寒くて暴風でも、マスクの中をげしょげしょにして必至に歩いて帰ってくると寒さなど微塵も感じない。だから部屋は涼しくてもウェルカムなのである。

 いそいそと荷物を下ろし、冷凍のものは極寒の冷凍庫に帰してあげて、冷蔵庫の民もそこそこにコートを剥ぎ取る。余裕があればハンガーに掛けてあげるのだが、今日は荷物が軽くはなかったためベッドの上に放る。ごめんねコートたん、許して。

 春が近付くこの季節、最近では、もはやマフラーを使っていなかった。マスクと言う名の防具が初期装備として設定されているため、、マフラーまで付けると完全防御過ぎて窒息しそうになる。マスクも同様に取って即刻ボッシュートである。

 この前久しぶりに会食があったが、そのときにマスクなしの楽しさというか楽さというか落差というか、を色々と思い出してしまった。まずもって人の表情がわかるし顔の全体像がわかるから、それだけで恐怖感が減る。ほとんど怖くなかった。そして息もしやすいしもう、なんて言うか、布一枚って、本当に邪魔くさいですね。勿論マスク合っての楽さも認めますけども、毎回強制されているとやはり嫌になってくることは言わずもがなだ。恋人と一緒。適度な距離感あってこそ愛情も育めるというものだ、多分。彼氏いたことないけど。

 と、一息ついて不快感を払拭したところで、これまた余裕があれば買ってきた戦利品を所定の位置に仕舞っていく。冬場の最近は、大体放置して夜か翌日まで放置プレイだ。ここは素直に謝っておく。ごめんね食材たち、冷蔵庫じゃなくても十分寒いからいっかなってなっちゃうんだよ許してテヘペロ。実際、ホットのペットボトルコーヒーを買っても、キッチンに放置するだけでほーら簡単、キンキンに冷えたアイスコーヒーに早変わり、レベルだ。ペットボトルの水も野菜ジュースもお茶も、特段冷やしておく必要はない。かろうじて生肉は極力仕舞うが。


 そんなこんなで今回も多分夜まで放置コースである。ぎゅうぎゅうに詰められた食材プラス生活用品立ちを見て、今日のレジの人は大当たりだったんだよなと思い出す今日この頃だった。

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