第十二話 もう1人の客
「うわっ!」
「ひっ!」
まさか自分達以外に客が来るとは思っていなかった圭一郎と華絵は、それぞれ変な声を出しながら飛び
「こんにちは……ってあれ、先客がいましたか。
戸口に現れたのは、肩に弓袋をかけた、すらりと背の高い男子高校生だった。黒縁の眼鏡の奥には、微笑んでいるかのように細い切れ長の目。その涼しげな目元には、柔らかな
圭一郎はこの人物に、見覚えがあった。
「また会いましたね、
後ろ手で引き戸を閉めながら、その男は圭一郎の目をまっすぐ見て言った。
(! こいつ、俺の名前を……)
「――ああ、まだちゃんと名乗ってなかったか。僕は
男子高生――安倍清崇は薄く微笑む。
自分の名前を知られていたからか、この男の持つ独特な雰囲気のせいか、圭一郎はなんとなく居心地の悪さを感じた。
――先月のあの事件の日、蘆屋家を訪れた術士の1人。泉穂から、安倍家の当主だと聞いた。
「君は藤宮さんだね。去年の総会以来か」
「……どうも」
清崇に声をかけられた華絵は、軽く
「――いつものを」
清崇がそう告げると、
清崇は圭一郎たちの横を通り、その包みを受け取ると、篠杜に短く礼を述べる。そのまま店を出ていこうとしたが、引き戸に手をかけたところで、ふと思い出したかのように振り向いた。
「――一生もんやから、ゆっくり選んだらええよ。1番なじむやつをね。じゃあ、お先に」
微妙に
「あいつは……」
「
「……お前にはじめて共感できたぜ」
閉じられた引き戸を見つめて、残された2人はそんな会話をした。
・
・
「こんなもんまであるのか……」
圭一郎と華絵は、先刻
「
そういえば、
「……これとかどこにでも売ってねぇか?」
天然石のブレスレットを手に取り、圭一郎は眉をひそめる。学校で、つけている生徒を見たことがある。
「全然別物よ。まあでも、
「……お前の
「そうよ。私のは祖父から譲り受けたものだけど」
そんな会話しているうちに、ガラスケースの
それは、稲妻のような文様の透かし彫りがほどこされた、
「!」
触れた瞬間、びりっと電気のようなものが体を走り、パッと手放す。コンッと軽い音がして、リングはケースを転がった。
「つけてみるといい」
それまで全く喋らなかった
圭一郎はそのリングを拾って、ゆっくりと右手の人差し指にはめた。
リングが指にぴたりと食いつくような感覚。
まるで指と一体となったような―――
(ん……??)
圭一郎の顔が、どんどん強張っていく。
「何? どうかしたの?」
華絵が圭一郎の異変に気づき、顔をのぞき込む。圭一郎は左手でリングを外そうとしていた。しかし―――
「これ、抜けねぇぞ……?」
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