第12話 『最後の顔』

怪盗イタッチ大作戦!!




著者:ピラフドリア




第12話

『最後の顔』





 ダッチは老人に銃口を向けて引き金に手をかけた。




「……さぁ、甲羅は俺が持ってきた。遺産の在り方を教えてもらおうか…………」




 銃口を向けられている老人は静かに笑った。




「……もうお前の手元にあるじゃないか」




 笑った老人の頭にダッチは銃口を押し付ける。




「ふざけるな……。この甲羅にはそんなに価値はない……。これは遺産を示している、だが、これには足りない部分がある」




 ダッチは甲羅の中央にある穴を指でなぞる。そこには五センチ程度の大きさの穴が空いていた。




「……白虎か」




「あんたが俺に資産を渡す気がないのなら、俺はあいつらと組むだけだ」




 カーテンから入り込んだ月光が二人の顔を照らした。




「…………ダッチ、お前に伝えなければならないことがある……………………」








 遺跡から抜け出し、屋敷へと戻ってきたイタッチ。




「…………じいさん」




 俺は血の付いた布団。そこに眠る亀の老人を見つけた。




 俺は眠る老人の顔に被された白い布を捲る。




「なんて顔をしてんだよ……」




 そこには満足そうに目を瞑った老人の顔があった。全開の窓から風が入り込む。




「……任せてくれよ。じいさん……あんたの息子は俺が守ってやる。……あんたの宝、俺が取り返してやるぜ」




 俺は眠る老人にそう約束すると布を被せ、折り紙で作った花を老人の眠るベッドの横に置いた。




「じゃあな、また会うことがあるとすれば、…………俺がしくじった時か」




 俺は老人に背を向けて部屋を後にした。




 移籍に行く前は屋敷にいた使用人も屋敷には誰一人残っていなかった。こうなることをあのじいさんは知っていたのか。




 俺はダッチのいるであろう場所を目指して、バイクを走らせた。







 第八都市ニエル。巨大ビル7階。そこにスーツ姿の猫科動物達が集まっていた。

 そして扉が開かれると一斉に扉の方を見る。




「ダッチ……やっと来たか」




 ダッチが部屋に入ると、中央に座っている杖を握った白髪の虎がニヤリと笑った。




「……どうだ、あんたのボスから情報は得られたか?」




「いや、親父は最後まで頑固だったよ……」




「そうか、それは残念だな」




 白髪の虎は寂しそうな顔をする。そして虎が杖を振るとそれを合図にダッチを部屋にいた虎の部下達が囲んだ。

 人数は二十人以上。その数のスーツ姿の猫科動物が武器を持ってダッチの行く手を塞ぐ。




「なんのつもりだ……」




「……あの人がいなくなってから、四獣は崩壊した。…………四獣の遺産には興味はなかったが……。……他のものに取られるくらいなら、俺が…………」






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