第11話 『ダッチの刀』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第11話
『ダッチの刀』
「遺産は全て俺がもらう。……この宝は俺のものだ」
ダッチはそう呼ぶと横にした刀を小刻みに振るわせ始める。
小刻みに揺れる刀。何をしているのか、俺が不思議に思っていると、
「ぐっ……」
突然、頭が痛くなる。ジーンっと頭が重くなり、立っているのが精一杯の状態だ。
姿勢を崩した俺は壁を手をついて倒れるのを防ぐ。
「辛いか?」
「何をした……」
俺がダッチを睨むと、ダッチは刀を震わせたまま刀を見つめた。
「この刀は特殊な音波を放出して、周囲にいるものの平衡感覚を奪う」
「なぜ、お前は大丈夫なんだ?」
ダッチはニヤリと笑うと、
「さぁな……」
そう言って俺の横を通り過ぎ、遺跡を出ていった。
ダッチがいなくなり、刀から発しられていた音が消えたことにより、俺はやっと立ち上がれる程度には回復した。
だが、今から追いかけてもダッチはもう遺跡を脱出している。
俺はダッチを追いかけることを諦めて、遺跡の奥へと向かう。そしておそらく黄金の甲羅が置かれてあったであろう場所にたどり着いた。
「……やはりそうか」
黄金の甲羅が置かれていた台。そこは甲羅がちょうどはめられそうな穴が空いている。そんな台だが、遺跡の他の場所に比べて埃の被り具合が少ない。
それに台も遺跡に似せて作られてはいるが、接続部分に違和感がある。
「遺跡は昔からあった。だが、甲羅は後から設置されたってわけか……亀のじいさんめ……面倒ごとに巻き込むために俺を呼んだってわけか……」
俺はあの憎たらしいじいさんの顔を思い出す。
「しかし、予告状を出した以上、このイタッチに失敗は許されない」
俺は百八十度回転して、遺跡の出口の方を向く。
「待ってろよ。……黄金の甲羅、俺が取り戻してやるよ」
俺はそう独り言を呟くと、遺跡の出口へと向かった。
月が夜の屋敷を照らす。カーテンの隙間から月の光が部屋に入り込み、暗い部屋に光が差し込んだ。
「……来たか。ダッチ…………」
「久しぶりだな。親父……」
老人は瞑ったような目で暗い部屋に入ってきたウサギを見つめた。
「……お前が先にここに辿り着いたということは……あの小僧は…………」
「ああ、親父の仕向けた怪盗は俺に負けた……」
それを聞いた老人はシワだらけの口を動かし、ニヤリと笑った。
「そうか、小僧が……」
そんなニヤけた老人にダッチは拳銃を取り出すと銃口を向けた。
「さ、これで黄金の甲羅は俺達の手にある。親父、四獣の遺産は俺が手に入れる。……親父、あんたの負けだ」
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