第3話 はじめましてダンジョンさん!……3

「みんな何かしら能力を取得することができたみたいだな。まあ、スキルを取得できないやつはそもそも冒険者試験に受かることはないから当然といったら当然なんだけどな。」


 軽く爆弾発言をしていたが、皆自分自身が手に入れた能力が気になって誰も気に留めていない。

 冒険者になれたのだからそんな細かい事情なんてどうでもいい。と思っている人のほうが多いような気がするが。


 少し離れてみていた沢さんが声をかけてきた。


「じゃあ、次のミーティング的なのやるから、ついてきてくれ。」


 沢さんについて体育館から出てダンジョンに引率いんそつされる。


 なんでわざわざ体育館のような広い空間まで移動してまでスキルを取得したかだが、ステータスによる誤爆の影響を抑えるためだと思われる。

 パッシブスキルで周りに毒を振りまくようなスキルがつかない確信が100ないとは言い切れないし、今回自分が手に入れたスキルも、聞いたことも見たことも無いようなスキルだったからだ。



 100年の歴史がありすべての事象を記録として残している。

そして”こういう時はこういう事が起こる”なんてことは無いので、”絶対”という簡単な言葉でくくることはできない。


 ステータスボードと呼称されている自身のステータスの効果や、レベル、能力値などの確認ができる自分しか見ることのできない半透明なボード。

 その配置の仕組みですら規則性を見つけることができていないのだ。見ることのできる情報の理解ができていないのに、見えることができないほぼ概念のような存在を理解しようだなんて不可能近い。



 ★



「ここがダンジョンだ。皆にはここで一人1匹ゴブリンを倒してもらう。ダンジョン内で血が出ることはほぼ無いから、躊躇せずに攻撃してくれ。」


 ダンジョンに出現する魔物はすべて偽物である。

 実体は存在するが、恐怖や喜び、喜怒哀楽の感情が一切なく、死にも恐れない。

 体に傷がつけられても血は出ず、傷つけられた場所からホログラムのような破片フラグメントが飛び散る。


 そしてダンジョンの中に入っている間。俺たち人間も偽物となる。

 魔物達とは違い感情は失っていないが、体を傷つけられてもフラグメントが飛び散るだけで痛みもない。

 首と体が離れても同様だ。


 ただし、現実世界との違いは致命傷を負っていなくともHPが0になったら等しく死亡することだ。


 HP100の人がダメージ1のリスカを100回したら死亡する。そんな感じだ。

 例え方が変だが。


 ダンジョンの中に到着し、手足が縛ってあるゴブリンがダンジョンの入口付近に投げ置かれている。


「では一人ずつゴブリンを倒してみてくれ。各々が手に入れたスキルを試しに使って倒してくれても、そこにおいてある武器を使うのも自由だ。まず、井口から。」



 井口は何も持たずにゴブリンに近づき胸元で拳を握り、落ち着くように呼吸を整えている。

 若干だが、震えているような気がする。

 ”殺した感覚がない”と言われても”殴って””殺す”ことには代わりはないし、現代日本で人を殺したような人はそうそういない。


 人殺しの経験があるならここにそもそもいないだろうし、素行の悪い人、反社会的勢力は”冒険者になれない”と明言されているので、喧嘩なんかもしたことがなかったのだろう。



 へっぴり腰になりながらも、手を大きく振りかぶり地面に寝転されているゴブリンめがけて拳を振り下ろした。

 井口はお世辞にも”たくましい”見た目ではなかったが、その細腕からは想像できないダメージをゴブリンに与えたようで、一撃でゴブリンはフラグメントと化して、ゴブリンの板場所にはドロップアイテムである魔石のみが残った。





「次遊動。」


 他の人が順に順にゴブリンを倒していき、最後に俺の番が来た。




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