第2話 はじめましてダンジョンさん!……2

 週末、俺はダンジョンに来ていた。


 ダンジョンの名前は酒吞ダンジョン。酒呑童子がボストして出現するから酒吞ダンジョンという安直な名前である。。

 このダンジョンは出現するモンスターの殆どが鬼系の魔物で、ドロップアイテムで時々お酒をドロップすることが特徴で、お酒のドロップ率はとても低く、辛いがうまいらしくとても高値で取引されている。


 今回ダンジョンに来たのはダンジョンでモンスターを倒すためではない。

 もしかしたらダンジョンに入るかもしれないが、ここに来た理由は講習会に参加するためだ。


 ダンジョンでは簡単に人が死ぬ。

 死亡者数を一人でも多く減らすために講習なんかを設けている。

 ここのダンジョン特有なんかではなく、全国共通だ。


 受付の人に案内をしてももらい、講習のある体育館のような場所に行く。

 体育館の中に入ると、床は木ではなく土でできており、運動靴で来てください。と書かれていた理由を理解する。


 体育館?の中央に既に人が7人ほどいた。


「名前は?」


 人が集まっているところに近づくと、教官とおぼしき人がタブレットとタッチペンを手に名前を聞いてきた。


遊動ゆうどうです。遊動遊斗。」


「はい。確認したよ。君が最後だから、開始まで時間が少しあるけどもう始めちゃっていいかな?」


「あっはい。私は大丈夫です。」


 教官は足元に置いておいた拡声器を手に取った。


「私は今回の酒吞ダンジョン新人ミーティングを取り仕切らせてもらう。C級冒険者のさわというものだ。よろしく頼む。知名度がそこまで無いからこのダンジョンで働くことを残念がっている奴らもいるかも知れないが、酒吞ダンジョンは実入りは少ないが、初心者のサポートがしっかりしているダンジョンで新人の死傷率が低い。そこだけは当たりだと思ってくれ。」


 そこもだな。と言い直し、ゴホン。と咳払いをしてタブレットをスライドさせて続きを話し始める。


「このダンジョンは知っていると思うが、鬼がメインのダンジョンで、極稀に酒を落とす。本当に低確率な上、途轍もなくうまいから高値で取引される。ダンジョン1階層で落ちる酒が100ミリリットル1万円で買い取られてるくらいだ。まあ、そんなことは置いていて、皆には早速だがステータスを入手してもらいたい。このダンジョンの初期支給品のマジックバッグ(極小)の中に覚者石が入っているから使ってくれ。使い方は”使う”ことを念じたら使えるはずだ。」


 6人全員にマジックバッグが配られる。

 見た目はスマホ1台入るくらいの大きさの皮の袋だが、実際の見た目以上にものが入ることから、冒険者には必須のアイテムである。

 極小サイズのマジックバッグはスキルで作ることができるので、スキル持ちの職人が一つ一つ作りダンジョンによるが所属と同時に配られることがあるらしい。


 極小サイズだと、両手で抱えれるほどの体積のアイテムを収めることができる。

 実際に買おうと思うと一つうん百万円する。



 マジックバッグの中から覚者石を取り出し、他の人達がしているように両手で握る。


(使う使う使う使う使う…………)


 何度も何度も頭の中でつぶやきながら使おうとする。

 すると覚者石から白色の光が溢れ出て体に吸い込まれる。


 これで魔法やスキルといったファンタジーなことができるようになるための”ステータス”を取得した。

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