スキルでゲームの世界に行き来できるようになったのでストーリーを全クリしファンタジーな現実世界でも最強を目指します!

椿流生{つばきるい}

はじめましてダンジョンさん!

第1話 はじめましてダンジョンさん!……1

「お兄ちゃん!その気持ち悪い顔やめてくれない。」


「だって〜」


 気持ちが悪いと言われても彼――遊動ゆうどう遊斗ゆうとの頬の緩みは収まらない。


「冒険者試験に受かって冒険者になれた事が嬉しいのはわからなくないけど、その気持ちの悪い顔どうにかしてくれない?」


 いつもであれば15分は寝込む妹の罵倒でも、嬉しさが有頂天に達している彼にとってはお店から聞こえるBGMのような、わざわざ気に留めるようなものではない。


 冒険者試験。それは10年前に突如として現れたダンジョンが、自衛隊と警察だけでは飽和を抑えることが困難となり、6年前に冒険者と称して民間人からダンジョンで魔物を間引く人を募集するたびに行わている試験だ。


 へたに多くの人をダンジョンに入れると、人命に関わる。


 そのため、下手なソシャゲのガチャよりも合格者の確率が低い。それも圧倒的なほどに。

 第1回の冒険者試験では400万人が試験を受けて、合格したのは5,000人を切ったほどだ。


 そんな倍率うん十倍の冒険者試験に受かったのだから嬉しくないわけがない。

 そんなことで、朝から顔が気持ちが悪い状態になっているのだ。俺は悪くない。



 封筒の中に同封されている重要書類に目を通し、必要なものにサインをしていく。

 死ぬ可能性がありますよ。本当に大丈夫ですか?

 といったものから、自分が配属されるダンジョンがどんなところなのか。また、そのダンジョンにある冒険者協会のスポンサー的な企業がイチオシの武器の広告を貼ったりだとか。


 書類やチラシを一通り読み終わり、思い出したかのように妹に告げる。


「配属先隣の県なんだけど、六華りっかはどうする?今の学校に通い続ける?」


「う〜〜……隣の県行く。」


「いや、もう少し考えろよ。」


「いや、でもまだ5月で、離れたくないっていうほど仲のいい友達できてないし。」


 妹の六華は俺と3つ違いの高校1年生で、今年度の春から家から近い公立高校に通っている。

 そして今は5月の半ば。確かに妹に中の良い友だちはできていないかもしれない。

 妹は俺以上に人見知りが激しいからな。

 いや、俺のは人見知りじゃなくてただのコミュ障か。


「じゃあ、二人で引越しでいいってことだよな。」


「うん!隣の県のどのダンジョンか知らないけど、こんなド田舎よりは絶対暮らしやすそうだし。」


 都会暮らしとか憧れるし。とつぶやくが、俺の配属先となっているダンジョンの周辺は結構都会だが、正直今暮らしているここも別に田舎というわけではない。

 店がなくて田んぼがほかと比べて多いだけだ。(なお、これを田舎という。)


「で、いつ引っ越すの?明日?」


「いや、普通に考えて昨日今日で引っ越しができるわけ無いだろ。家を探してもないし……まだ……収入とかないし……」


「まだ、何?ちょっと聞き取れなかった。」


「いや、別に大したことじゃない。から」


 大したことじゃないわけがないのだが、妹の手前そんなことを堂々という精神は持ち合わせていない。

 両親の死後色々と苦労させてしまっている。

 さっさとダンジョンで稼がないとな。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




次は11日夜。投稿予定。

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