突撃! Sランクダンジョン!

「うおおお『ファイアストーム』!」


「ギャオオオオオオ!!うぇあlkrじゃえw;rkjュドラ」


 九つもの首を持つ大蛇、ヒュドラが僕の放つ炎魔法により丸焦げの炭に変わっていく。流石ヒュドラ級のダンジョンだけあって、ダンジョンをちょっとも歩かない内にすぐにヒュドラと遭遇できた。


 ヒュドラは異様なまでの再生能力を持ち、切りつけて割ってしまうとその分だけ首が増えるという厄介極まりないモンスターである。


 だから再生しないように炎属性の攻撃で傷口を焼きつつ首を落としていくのが定番の戦い方であるが、もちろん僕はそんな風には戦わない。圧倒的な火力の前には戦法なんて必要ないのだ。


 炭になったヒュドラがボロボロと崩れ去ると、その後ろからまた別のヒュドラがやってくる。そしてその九つの頭のうちの三つほどが口を開け、僕に狙いを定めてきた。


「そういえばこいつ毒持ってたな。ちょっとくらってみるか」


 大口を開けた頭は案の定、紫色の液体を僕に飛ばしてきた。大量の毒液がびしゃびしゃと肌にかかる。


「ぐああああああああああ!! 苦しいいいいいいいいいい! 死ぬううううううううううううううう!!」


 毒液に塗れた僕はもんどりうって地面を転がり回った。そしてそこに隙を見出したヒュドラが残りの口で一斉に僕に襲い来る。


 万力のような顎の力で頭、両手、両足の五体に噛みつき、あろう事かそれを別々の方向に引っ張り上げてくる。一瞬でも隙を見せた冒険者をバラバラに引きちぎって絶命させてしまうという悪夢のコンビネーション攻撃である。


「まあ、魔法使いには効果的だよな。魔法使いにはだけど」


 毒も吐かず噛みつきもしない一つだけ余った特にやる事のないヒュドラの頭に動揺の色が見えた。目の前の冒険者の体がまったく引きちぎられない。というか最初の噛みつきの時点で牙すら刺さっていないのである。いかな頑丈な戦士といえどこれをくらってびくともしない人間はいない。ましてや貧弱そうな魔法使いであれば尚更である。


「『ウィンドカッター』」


 僕の体表から放出された風の魔力が刃となり、五つの首を切り飛ばした。


 いやそれだけでは止まらない。拘束を脱してなお止まない猛烈な風魔法の奔流は、千を超える刃の嵐となってヒュドラの体を首の先端から徐々に細切れにしていく。


 いくら再生能力を持つといっても、その速度と性能には限度がある。首を切られて声も出せないヒュドラは、超高速で連続稼働する風のギロチンによって悲鳴を上げる事すらできないままミンチにされていったのであった。


「そして……嘘をついて悪いな。実は毒も効かないんだ。丈夫だから」


 辺り一面にまき散らされたヒュドラの血の上に立ち、最後のセリフを決める僕。その姿は毒に塗れてビッチャビチャだったが、多分かっこよかったと思う。毒はこのあとちゃんと洗い流して聖魔法で浄化した。

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