やってしまったやってsまったやっtt死まった

 だらりと横たわったステラは一切の反応なくただ虚空を見ている。読んでも返事をしないステラ。二度も呼んだのに返事をしない。


「ステラ?」


 三度目で返事が返ってこればそれはそれだけの話として終わってくれる。そう期待して三度呼びかけたのに、奇妙にも彼女が返事をしてくれるイメージすら一切浮かばなかった。実際彼女は返事もせずこちらを見もせずにただ横たわり続けている。


 ざわざわと胸に嫌な空気が入り込みはじめる。先ほどまではつらつと動いていた彼女がなぜそこで微動だにせずに寝ているのか。いやもしも寝ているだけなら相変わらず変な女だと強引に納得もするだろう。だが、これは寝てさえいないのではないか。


 四度目は呼びかけなかった。これ以上ずっと返事が返ってこなかったらと考えると口が開かない。代わりかどうかは知らないが、僕は彼女の肩を抱き起こした。


 意思による統制の一切感じられない重力にのみ支配された弛緩した体。首がだらりと横を向く。いや横を通り越して斜め後ろに。


「え?」


 何が起こったのかわからなかった。わからなかったが、その困惑に一秒さえ浸る間もなくすぐに首の皮が内側からとがった棒で押されたように突っ張っている事に気づく。


 体がピクリとも動かない。意識も無い。そして、


「お……おい! 嘘だろステラ! 返事をしろ!」


 首が曲がらないようにまた椅子に横たえて呼びかけるが、それが彼女を覚醒に導くことはない。ただただ外力に晒されて起きたり寝たりする様が生気の無さを実感させるだけだ。


 意味がわからない。僕がほんの十数秒向こうを向いていた間に彼女がどうなったんだ。誰かが隙をついて彼女を? いや、だとしたら流石に僕が気付いている。そもそも世界を回らんと鍛錬していた彼女の首を一瞬で折るなんて芸当、そうそう簡単にできるはずがないんだ。その辺の人間がそう簡単に……。



 



 唐突に思考に割り込んできた何の変哲もない一つの事実。


 ああ、それは僕ならできるだろう。グリフォンを投げ飛ばすほどの怪力。山を飛び越えるほどのデタラメフィジカル。だけどそれがどうした? だって僕がやった訳じゃない。この凶行は僕が向こうを向いていた十数秒の間に起きているのだから。



 



 そういえば彼女は僕が向こうを向いている間、一言も喋っていない。僕が照れてそっぽを向くような反応、ステラだったらきっと朗らかに笑うだろう。何故黙っていた。何か声を出せない事情でもあったのか。犯人に口を塞がれていたとか?



 



 確かに首が折れていたら声も出せない。実際今の彼女は何も言わないし動く事すらしない。しかしそうすると結局誰がやれたのかと振り出しに戻ることになるじゃないか。しかも僕が向こうを向いた瞬間にちょうど首が折られただと? そんな針の穴を通すような芸当を誰が



  お お お  お お お



 力の強さ:9999


 焦って振りほどいた彼女の体

 

 やけに静かだった十数秒



 彼女の肩を掴む手が震えていた。僕のユニークスキル。人の域を超えた力。それがその手に宿っているという自覚までは授けてくれなかった。

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