終章 自由奔放女子の心意

美優を送っていくと言ったのは、聞きたいことがあったからだ。


「わざわざ送ってくれなくてもよかったのに…。」となぜかいつものトーンとは違う美優。

「どうしても聞きたい事があったからな、ついでだ。」


「聞きたい事ってな~に?」


「どうして赤の他人の純の事を助けてやったんだ?」


「純って誰?」


「女の子の方の悟吏の事だよ。」


「あ~あ、そんな名前だったんだね。始めて知った。」


「お前にとって人の名前なんてどうでもいいことだもんな。」


「そう言うこと~。」


「ついでにいうとお前にとって他者の性別・容姿・年齢すべてのデータは人と向き合うには関係のない事象だもんな。」


「例えば、普通のおじさんが自分は女子高生だから制服を着ていると言えば、その人を同年代の女子高生として扱うもんな。すげぇよ。」


「悟くんは私の一番の理解者。だから世界で一番好き。」


恥ずかしいセリフすら平然と言ってくる所は昔から変わらない。


「そんな悟くんが助けたいと思った相手を助けるのは当たり前の事。」


「それに彼女は自分の事を朝倉 悟吏だと自分の口で言った。」


「私の中ではその時点で彼女は二人目の幼馴染の悟くんなった。当然、自分が発した言葉に責任を取ってもらう。」


……なかなか手厳しい言葉だ。…でも、純の心が救われた事実はそこにある。


「そうか、じゃあお礼を言わないとな。」


「美優!もう一人の俺を助けてくれてありがとう。俺一人ではとても救えなかったと思う。」


美優は少し黙ったあと喋りだした。


「悟くんの優しくてそういう所は好きだけど、人に関わると言うことにもっと責任を持たないとダメだと思うよ、私は。」


「その人の一生が左右される時、そこにいる登場人物は自分と相手の人生に責任を持たないとダメ。」


「もし、自分が原因でその人の人生が大きく変わってしまった場合、必ず後悔という凝りが残る。それが良い方向に転べばステキな物語になるけど、悪い方向に転んだ場合、それは怨みや憎しみに変わったりするんだよ。」


「なんでもかんでも救えないんだよ~人間は。」


遠回しだが、俺に注意喚起してくる。


「心配してくれてありがとう、今度から気を付けるよ。」


「でも、本当は大好きな悟くんが増えたので、ただ嬉しかっただけというのが本音だったり。」


「そうか。」と俺は答えた。


俺としても、本当の理由なんてどうでも良かった。ただ一人の人間の心を救えたんだから。


それからは何事もなく彼女の家の前に到着した。


「送ってくれてありがとう。今日はとても楽しい一日だったよ~。」

と言い、


「おやすみ美優。」


「おやすみなさい悟くん1号。」


と言って二人は別れた。

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