第8話 柏野先輩の詠唱魔法

まさか、今日の朝にあった女子の顔すら覚えていないとは…。

昼前にも二人の話題に出ていたぞ!


「柏野さんよ~朝に会った人の顔くらい覚えましょうや。」と俺に言われた美優は少し考えたあと………。


「あ~~~見た目がJKの悟くんだ~~!」


おい!所々の記憶が飛んでるぞ!


「えっと私は………。」と困り果てた顔をする白河さん。


「私?……ゴメンね朝はキツく言い過ぎた。」


「えっ」驚く白河さん。


「突然女の子になった悟くんも大変だっただろうに、ここは自分の家なんだから僕でも俺でも好きに自分を呼ぶといいよ!」


「だ~か~ら~!さっさとごはんを私に作れよ。」

なんだ、アメとムチの使い分けか?


「ここは私の家じゃないから勝手なこと出来ないです。」と答える白河さん。


「心は悟くんなんだから、自分の家だろが、え~っとそれとも何か?女の子の体だからごはんは作れないのか?」


「それか女の子になったから美優ちゃんの事がもう好きじゃなくなってごはんを作らないのか~。」


「そんな事ありません!」と白河さんが答えた。


「じゃあおいしいごはん作ってね。悟くん。」


「分かりました少し待ってください。」


折れた。キッチンに入るのを拒んでいた白河さんを強引に入れて料理させていやがる。


たとえ俺は男でも女だったとしてもお前は好きじゃねぇよ。


キッチンで手伝おうとしたら、美優に止められた。


どういうつもりだって言おうとしたら、

「記憶戻りそう?悟くんが迷惑かけてゴメンね。」って謝られた。


まさかの解答。う~ん。こっちが心配になる。記憶喪失ですか?



夕方頃、母さんが仕事から帰宅してきた。


母さんは知らない女の子が料理しているのを見て驚いていたが、

美優が突然「見た目は女の子だけど、心は悟くんなの~。」って説明しだした。

(やめろ!お前の脳内ファンタジーに人の母親を巻き込むな!)

それと今すぐ帰れ!


それを聞いた母さんは白河の隣に入って料理の仕上げを手伝う。


「お母様ありがとうございます。」と言う白河さんに対して

「女の子になると言葉使いまで変わるのね。悟吏。」と母さんが言う。


それを聞いた白河さんはとても嬉しそうだった。


料理を作り終えた白河さんは時間を見てハッと我に返った。


「帰らないと。」と言う白河さんに対して


「どこに帰るの?悟くん。」と美優。


「え~っと、この体の白河の家です。」


「うんじゃあ、外に出たらちゃんと女の子を演じるのよ。分かった?」


「はい。分かりました、柏野先輩。」


「あ~その響き良いわ~。悟くんこれからずっと私をそう呼びなさい!」


こくんと頷き笑顔で家を出た。

柏野先輩の詠唱魔法の威力は半端なかった。


その後すぐに母さんが俺を呼んで「送っていってあげなさい」と背中を押す。

「分かった」といい俺も自分の家を出た。

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