第3話 幼馴染×僕っ子=混ぜるな危険
熟考していたため周りをよくみていなかった。奴が戻って来やがった。
振り返ると、
「あっ!悟く~んこんな所にいた~!探したよ~。」
と美優が俺に話し掛けてきた。
朝から俺の名称が安定せず、呼び名がブレブレなんだよと突っ込みたくなる。
今はそんなことどうでもいい。情緒不安定な変態がこの場を荒らすのは明白だ。どう切り抜けようか…。
名も知らぬ僕っ子の彼女が突如、口を開いた。
「信じて欲しい。僕が朝倉 悟吏なんだ。」と美優に向かって言ってしまった。
「へっ?どういうこと。悟くん…実は女の子だったの?」
(ちげ~よ!普通にわかんだろ!そんな嘘。一人称は違うし、お前を相手に信じて欲しいなんて一度も言ったことねーよ!)
頭の中で突っ込みを入れたのだが、声に出した方が良かったかも…。
「ふ~ん、悟くん!可愛くてカッコいい女の子になったね!…これはこれでアリだなぁ。」と長身モデルボクっ子女子に向かい言い放った。
(アリって何?)
「じゃあこっちの悟くんは中身が彼女なんだね、あなた(名前)はなんて言うの?」
ヤベぇよ収集不能な事態になったよ。幼馴染×ボクっ子=混ぜるな危険だよ。
「え~っと…何も覚えていないんです。」と言った。言うしか無かった。
もう色々とめんどくさい。
茶番劇の役者としては100点満点の解答だよ!
「あっ!そうか彼女の鞄の中に身分証明が入っているかも。」
変な事に気が付く奴だな。って言うか当事者でも無いのにこの場の会話の9割を支配するんじゃねぇよ。
「え~っと、鞄の中身みていいですかぁ~?」
と美優が俺に向かい話し掛けてくる。
俺の鞄じゃねーよ。いい加減この茶番劇に気づいてください。美優様。
「どうぞ」ってボクっ子の代わりに言った。
「どれどれ~ってあったよ~!…ふむふむ、白河 純(しらかわ じゅん)って言うんだね。学年は…っと一年生みたい。」と俺に向かって言ってきた。
知らねーよ。初耳案件だよ。
「よし!じゃあもう遅刻する時間だからお互いのふりして登校して放課後に話をしようか?いいかなっ二人とも。」
「はい、それで構いません。」と白河さんは答えた。
「はい、大丈夫です。」と俺が答えた。
変な形で茶番劇は幕を閉じたのだった。
「それからっ!悟くん!相手の記憶が無くなるくらい頭をぶつけるなんて迷惑かけちゃダメだよ!」
「ほんと、もっと相手を思いやって行動しなきゃダメだよ!」
「それからっ!責任を持って純ちゃんを演じること!分かった?」
白河さんの姿をした俺らしき人物に対して怒っている。
頭突き以外の言っている事をほぼ毎日しているであろう人に言われたくないって思いました。そもそもあなたがいなかったらここまでこじれることはなかったはずですよ。
「さて!純ちゃん、教室に行こっか?あとの事はお姉さんに任せなさい!」
自信満々な態度の美優。
俺は純じゃないし、あなたを姉だと思った事は一度もありません。
色々とめんどくさいから近づきたくはありません。
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