第1章 私が女神様の配達人になるまで…3
「まあ、とりあえず。お互いに仕事をやってしまいましょう!」
御影さんはガイア様に紹介され、二人だけにされた途端、メモを取りだしてそう言いました。
……先輩、慣れてますね?
そう目で語ってしまっていた私に、御影さんはニッコリ笑われました。
「ガチな話。早く済ませて戻らないと、うちの残念神が何かやらかしてそうで不安です…」
そう言えば、御影さんを紹介した時のガイア様の目がかなり据わっていたような気がします。
確か、御影さん達が死んだ後に配下にするはずが、その残念な神様のせいで予定が狂ったとか。
愚痴が止まらなくなりそうなのを、慣れた様子で御影さんが止めてましたね。
「それよりお聞きしときたいんですけど、お名前は?」
「名前…。名前…は…」
そこで私はやっと自分の名前を忘れていたことに気づいたのです!
夫がいたことも、子供がいたことも、自分がどんな生活をしていたかも覚えているのに、名前だけはどう頑張っても思い出せないのです。
混乱する私に、御影さんは優しく笑ってくれました。
「思い出せなくてもいいじゃないですか。これからの新しい人生ですよ。新しい名前で始めてもいいと思います!」
この言葉に私の混乱は、容易く治まりました。
そうです。新しい人生の始まりなのです。本当に今までと違う生活の始まりなのです!
はじめ。ついたち。
そう読める文字。方角では北を意味する言葉です。
北は地図では上になることが当たり前になる方角。
これから配達人として、仕事をする私には地図は必須アイテムです。
新しい人生を配達人として始める私には、似合いではないでしょうか。
「名前だけでいいんですか?」
「全然問題ありません!!」
こうして、私の新しい名前は『
それからは御影さんと、前世でのメール便の仕事の話になりました。
配達物が確実に入らないポストだと、袋に入れて玄関先に置いたり、ドアノブに吊るしたりしてたこと。
地図はその都度更新される訳では無いため、ネットで調べるとたまに池のど真ん中とか交差点の中心とかになってること。
身内の集まってるとこだと、表札だけで配りようがないこともあるとか…。
御影さんが食いついたのは、ポストがポストじゃなかった話でした。
「ポストがポストじゃない?」
分かりませんよね。私も分かりませんでした。
そこのお宅のポスト。
門の横にある植え込みの中に置いてあった電子レンジがポストだったんです。
しかも、地面に直置きの上、植え込みの中で、普通に見えなかったんです!
そんなん分かるかーーーっ!!
って、たまたま遭遇した郵便局のお兄さんが教えてくれなかったら、ウロウロしてる不審者として通報されちゃってましたよマジで。
「…ちなみにその電子レンジに、張り紙とかは?」
「その時は無かったんですけど、数ヵ月後には電子レンジに、〒マーク貼ってましたね…」
あれに比べたら、ちっさいポストのお宅の人が、カタログ用にと、玄関先に専用の箱を置いて、指示書を貼ってくれてたの見た時は、鉢合わせた他社のメール便の方と、
「ここの家の人は、なんていい人なんだ!」
と、感謝して頷き合いましたね。
されて嬉しかったことは、自分でも実践しちゃいましたからね!
仕事もそうですけど、自分がしてもらって嬉しかったことや、助かったことって、自分もそうすると、広がって楽になることあるんです。
情けは人の為ならず。
ってやつですよ!
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