第222話 アクシス領に向かうための作戦は?

「でもアクシス領にこれから向かうなら作戦を考えないとね」

「そうだね。流石に普通に入れてくれるとは思えないし」

「ムッ、何故だ? 確かに出ては来たが元々暮らしていた領地だ。気にすることはないだろう」


 エクレアの意見に同意だった僕だけど、ウィン姉は問答無用で領地入りしようとしているみたいだった。いや、流石にそれは厳しいと思うのだけど。


「ウィン姉だけならもしかして入れるかもだけど、僕も一緒だと厳しい気がするよ」

「何! そんな馬鹿な! こんなに愛らしい弟が帰還するのだからむしろ国総出で迎え入れるべきだろう!」

「考えが壮大過ぎるよ!」

「スピィ!?」

 

 ウィン姉の僕の評価がわけのわからないことになってるよ。国って……流石にスイムも驚きを隠せないよ!


「とりあえず行くにしても準備は必要かもだし、一旦外に出ない?」


 続いてのエクレアからの提案。確かに僕も暫く宿に引きこもってしまっていた。一度外に出て頭をリフレッシュしたほうがいいかもしれない。


「うん。ありがとうエクレア。ウィン姉もいい?」

「勿論だ。外で甘やかすのもまた乙なものだからな」

「甘やかす前提!?」


 外に出ると聞いてウィン姉は嬉しそうだった。それはエクレアとスイムも一緒みたいだ。やっぱり心配掛けてしまっていたんだね。

 

 そして僕たちは改めて宿から出た。とは言えただ意味もなく町をウロチョロしても仕方ないんだよね。だから僕は先ずは冒険者ギルドに行こうと言った。


 ギルドならもしかしたら何か役に立つ情報がつかめるかもしれない。


「ネロくん! 良かった。外に出てきたんだね」


 ギルドに向かうとフルールが笑顔で出迎えてくれた。いつも優しいフルールの心遣いがすごくありがたい。


「心配かけてごめんねフルール」

「いいのよ。冒険者だって休息が必要だからね」

「うむ。そのとおりだ。特にネロに関しては毎日が休息でもいいぐらいだ!」

「え? いや、それはちょっと……」

 

 ウィン姉の発言にフルールが困惑しているよ! 


「ところで今きたってことは何か依頼を探しに?」

「えっと、依頼というか情報を知りたいというか」


 そう答えるとフルールがハッとしたような顔を見せた。


「それってやっぱり……ガイのこと?」


 フルールの表情に影が差す。やっぱりフルールもガイについては気にしているのだろうね。


「それも、あるかな。フルールはガイについて何か知ってる?」

「それが、ごめんね。ガイについては私の方にも殆ど情報が入ってこないの」


 フルールが申し訳無さそうに答えた。ということはガイの刑についても知らないのかな。だとしたらレイルの話は本当にありがたかったかもね。


 それがなければガイの刑が決まったこともわからずじまいだった。


「あの、実は私たち一度ネロが生まれ育ったアクシス家の領地に向かいたいと思ってるんだけど、普通にいけるのかな?」


 ここでエクレアが本題に入った。フルールは信用できるしストレートに聞いた方が早いと判断したのかもね。


「アクシス領に……それは今は難しいかも。冒険者の間でも話題になっていたんだけど急に領内に出入りするのが厳しくなったみたいなのよ」


 僕たちの疑問にフルールが答えてくれた。それは僕たちにとっては芳しくない事実だった。


「何、問題ないさ。拒むようならこの私が殴り飛ばしてでも」

「ちょ、それは流石にダメですよ! 幾らAランク冒険者でも余計なトラブルを生むのは看過できないですよ!」


 拳を鳴らすウィンにフルールが慌てた様子で注意した。確かに幾ら地元とは言え、無理やりそんな真似をすればそれこそ大騒ぎになってしまうだろうし警戒心を高めてしまうだけかも。


「――ネロ。良かったギルドにいて」


 その時、後ろからか細い声が聞こえてきた。振り返るとそこには――アイスの姿があったんだ……。

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