第216話 姉が気にするエクレアとネロの関係
「話はわかった。教えてくれて助かったぞエクレア。しかし――私の大切な弟の事をそこまで知ってるとは一体何者なのだッ!?」
「ヒッ!」
エクレアは現在のネロについてウィンリィに説明した。それについては納得してくれたのだが、今度はエクレアとネロの関係について踏み込んで聞いてきた。
そのあまりの迫力にエクレアも驚きたじろいでしまう。
「スピィ! スピィ!」
するとスイムがウィンリィとエクレアの間に割って入り、声を上げた。エクレアに酷いことしないで! と言っているようであった。
「もう貴方も落ち着いて。スイムもエクレアが襲われてると思って止めに入ってるじゃない」
フルールが諭すように言った。むぅ、とウィンリィが唸りエクレアから離れる。
「済まない。弟の事となるとつい我を忘れてしまうのだ」
「全く勘弁してくれ。流石に娘に手出しするなら俺も黙ってられないんだからよ」
「娘? そうか。この子はギルマスの娘だったのか。確かにパパと呼んでいいたな。それによく見ると似て……るな髪の色とか」
「余計な気を使わなくていいぞ。余計傷つく。大体娘は母親似なんだよ」
苦み走った顔でサンダースが言った。サンダース自身も顔は似ていないことを自覚しているようだ。
「とは言えだ、切れたら怖いとこなんかは俺にも似てるぞ。まぁそこはあいつもそうなんだがな――」
どこか遠い目でサンダースが言った。あいつとは妻の事なのだろう。聞いていたエクレアも苦笑している。
「しかし弟との関係は気になるぞ」
「安心しろ。エクレアとネロはパーティーを組んでいるというだけだ。仲間意識はあるだろうが。それだけだ。それだけだよな!」
クワッと眉を怒らせサンダースがエクレアに向き直って問うた。まさかそれ以上の関係ということはないだろうな! と念を押しているようだった。
「え、あ、うん! そ、そう。パーティーを組んでる仲間!」
エクレアが額に汗を滲ませながらもこくこくと頷いて答えた。するとウィンリィも納得したように頷いていた。
「それはわかったが、このスライムからは何故ネロの匂いが?」
「スピィ?」
ウィンリィがスイムを覗き込むようにして聞いた。スイムも疑問符が浮かんだような顔をしている。
「スイムはネロのペットなのよ。もっとも今となってはもう大事な友だちといったところだろうけどね」
ウィンリィの疑問にはフルールが答えた。ほう、とウィンリィがスイムを手に取り持ち上げた。興味深そうにマジマジと見ている。
「うむ。私の弟が選んだだけあってよく見ると可愛らしさの中に力強さも感じるな」
「スピィ~♪」
褒められているのがわかったのかスイムはとても嬉しそうにしていた。
「しかし、話はわかったがまさか宿に籠もっているとはな」
顎に手を添えウィンリィが考えを巡らせた。
「マイト家のせがれが捕らえられたという話は耳にしていたが、まさかこんなところで繋がっているとはな。これはやはり放ってはおけない……よしエクレア行くぞ!」
「え? 行くってどこへですか?」
「無論! 大切な弟の下だ! 案内してくれ!」
「え、えぇええぇええ!」
突然の申し出にエクレアもびっくりだ。それは今のネロの落ち込みをわかっていたからだ。
「それはもしかしたらいい手かもね。ネロも実のお姉さんが会いに来たとなれば無下には出来ないだろうし。そこから立ち直る緒が掴めるかも知れないわ」
「あぁそうだな。ネロの姉がAランク冒険者だったとは驚きだが、姉であり先輩冒険者であるウィンリィと再会できればいい刺激になるかもしれないぞ」
フルールとサンダースが納得したように話した。確かにウィンリィという姉がいればネロも勇気づけられるかも知れない。
「それは確かにそうかもしれないね。うん! わかった! 一緒に行きましょうお姉さん!」
「うむ。それと私の事はウィンで構わない。実の姉でもあるまいし、そんな他人行儀な呼ばれ方はむず痒いからな」
「わかりました。ウィンさん」
「ウィンだ!」
「えぇ!」
「ウィン! だ。私もエクレアと呼ばせてもらう」
どうやらウィンはさん付けで呼ばれたくはないようだ。それだけエクレアに気を許しているということかもしれないが。
「は、はい! わかりましたウィン。それじゃあ行きましょう」
「うむ。頼んだぞエクレア」
「スピィ!」
こうしてエクレアたちは再びネロが引きこもっている宿に向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます