第215話 Aランク冒険者のウィンリィ
「ちょ、ちょっと待って。ネロのお姉さんって貴方一体?」
「うむ。私はウィンリィ。ネロの姉でありAランクの冒険者だ」
「え、Aランク!?」
フルールが目を見開き叫んだ。冒険者は数多くいるがAランク冒険者になるのはそう簡単ではない。特に実力や実績を兼ね備えた一流の者だけが辿り着ける上級のランクである。
そのAランク冒険者が今まさに目の前にいることにフルールは勿論エクレアも驚きを隠せないようだ。ましてそれがネロの姉というのだから尚更だろう。
「でも、ネロくんの姉ということはもしかして貴方はアクシス家の?」
「私をその名で呼ぶな!」
フルールが確認するように問いかけるが、途端にウィンリィが不機嫌になった。
「私はアクシスの名を捨てたのだ。今の私はただのウィンリィだ」
「えっと、つまりネロと同じで追放されたということ?」
「そこは少し違うが、弟を追放するあいつらは本当に愚かだと思っている。というかやはり弟を知っているのだな!」
「ひゃッ!?」
「スピィ!?」
グイグイ詰めてくるウィンリィの圧に完全にエクレアは気圧されていた。エクレアの肩に乗ってるスイムもびっくりしている。
「ムッ――そのスライム!」
するとウィンリィがエクレアの肩からヒョイッとスイムを掴み引き寄せた。
「スピィ!」
「あ、何を!」
「むぅ、これは愛弟の匂い! 芳しい匂いではないか!」
慌てるエクレアだがウィンリィは恍惚とした表情でスイムを抱き寄せ頬を擦り寄せはじめた。
「スピィ! す、スピィ~」
「素晴らしいネロの匂いもそうだがお前なかなか気持ち良いではないか!」
「スピィ~♪」
「えっと、スイムが受け入れてる?」
最初は戸惑っていたスイムだがウィンリィに擦り寄られまんざらでもない様子だった。それにエクレアも驚いていた。
「ふぅ。中々堪能したが私は弟本人に会いたいのだ!」
「え、えっとぉ」
「鼻血出てるわね」
スイムをエクレアに返しつつ力説するウィンリィだが、フルールの指摘通り鼻からダラダラと流れる血でなんともしまりがない。
「さっきからやかましいぞ。一体なんなんだ?」
「あ、ギルドマスター」
「パパ」
「むッ!?」
騒ぎを聞いてかエクレアの父親でもあるサンダースが二階から降りてきた。それに気がついたフルールとエクレアが声を上げウィンリィも反応を示した。
「ここのギルドマスターか。私はウィンリィ! 弟のネロの姉だ! さぁ弟がどこにいるか教えろ!」
「は? ネロの姉だって?」
「そうなんです。おまけにAランク冒険者なんだとか」
「何? Aランク冒険者でウィンリィって、まさか暴乱姫のウィンリィか!」
ウィンリィの正体に気づいたサンダースが驚きの声を上げた。それに反応したかのようにウィンリィが、
「暴乱姫だと!」
と怒ったような声を出した。
「私はそんな二つ名など認めていない!」
「何か怒ってるけど、その二つ名はどうして付いたのマスター?」
「……実力は高いんだがな、ちょいちょいやりすぎてしまうことからそう呼ばれてんだよ。実際の腕はSランク相当だが暴走することもあってAランクで留まっているという話だ」
「あはは……」
話を聞いたエクレアも思わず苦笑いである。Aランクでも相当なものだが当然Sランクはそれ以上であり驚きだが、暴走という点ではなんとなくわかるような気がしたのだろう。
「それにしてもネロの姉とはな。つまりお前もアクシス家の人間ってことか」
「ふざけるな! だから私をあんな連中と一緒にするな! 不愉快だッッ!」
「うぉッ!?」
「キャッ!」
「何だ何だ!?」
ウィンリィが叫んだ直後、突風が生じギルドの机や物が吹き飛ばされた。突然のことに冒険者たちも驚いている。
「こ、こういうことか。暴嵐姫の意味がわかったぜ」
「ムッ、しまったつい!」
苦い顔を見せるサンダースであり、ウィンリィもやってしまったという顔を見せていた。その様子にエクレアもフルールも目を白黒させた。
「本当にネロに会わせて、だ、大丈夫かなぁ」
「スピィ……」
そして姉を名乗るウィンリィにネロの事を伝えることにそこはかとない不安を覚えるエクレアなのだった――
作者より
https://kakuyomu.jp/works/16817330668155828278
↑↑「現代の暗殺者として育てられた俺は、異世界では普通に暮らしたい」という新作を公開しました。学校で虐められていた主人公がクラスメートと共に異世界に召喚され、暗殺者の力で容赦なく復讐し異世界で無双する物語です。丁度復讐が始まるところなので少しでも興味を持たれたならチラリとでも読んで頂けると嬉しく思います!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます