第210話 明かされる真犯人
フレアの言い分に当然僕は納得がいかない。いきなりやってきてハイルトン殺しを含めてあらゆる罪を僕に被せようとしているんだ。
「その話は無理がありすぎるわ。大体ゴブリンについては仮面を被った人物とゴブリンクラウザーという特殊なゴブリンが起こしたことだって話はついているはずだよ!」
「スピィ!」
エクレアとスイムが反論してくれた。ゴブリンについてはまさにそうだ。僕がやったことにするなんて無理がありすぎるし仮面の人物とゴブリンクラウザーについてはシルバも確認していると言っていた。
「協力者がいたと考えるべきだね。そもそも水の紋章しか持っていないネロ一人でこれだけの行動を起こせるとは思えない。だけど最終的に仲間割れに発展し自分が狙われたわけだ。大方報酬で揉めたといったところか」
あまりに突拍子のない話で僕は言葉を失った。だけどフレアは、いやアクシス家はこれで押し通すつもりなんだ。そうだこいつらはそういうことを平気でするようなやつらじゃないか。
「プッ、ハハハハハハ! なんだそりゃ。全くさっきから聞いてれば見当違いなことをペラペラと。フレアさんよ? あんたそれで本当にネロを捕まえられると思っているのか?」
突如フレアの推測を笑い飛ばしガイが一歩前に出た。
「ガイ。さっきから一体どういうつもりだ?」
「どういうつもり? ただ思ったことを言っているだけだ。大体お前の話は前提条件からして間違っている。ハイルトンをネロが殺した? 馬鹿いえそんな筈あるもんか」
「随分な自信だねガイ。だったら他に犯人がいるとでも?」
「――あぁそのとおりだ。いるさ目の前にな」
え? ガイが今何かサラッと、とんでもないことを言ったような――
「ハイルトンをダンジョンで襲ったのは俺だ。あのクソ野郎がダンジョンで死んだのも俺があいつをボコボコにしたからだろう。だからネロは犯人じゃない。残念だったな」
ガイがフレアに向けてそんなことを言い出した。そんなガイが、嘘――
「……お前は自分が何を言っているのかわかっているのか?」
「よくわかってるさ」
「はぁ。もう仕方ないわね。だったらそれに協力したのも私よ。ガイに協力してあいつを魔法でぶっとばしてやったんだから」
「ちょ! フィア!」
「……ごめんねエクレア。ネロ。余計なことしちゃったかもだけど、でも後悔はしてないわ」
キッとフレアを睨むようにしてフィアが言った。なにそれ、そんなの知らない。ガイだけじゃなくてフィアまで……。
「それなら私も!」
「セレナは関係ねぇ! こいつはただそこにいただけだ。怪我の治療もしようとしたが俺等がそれをさせなかった」
「ガイ! なんでそんな!」
「その通りよ。あんなクソ野郎治してやる必要ないって無理やり連れ帰ったの」
「フィアまで!」
「いいからお前は黙ってろ!」
ガイが叫んだ。セレナの肩がビクッと震える。
「さぁこれでもうわかっただろう? 前提条件のハイルトン殺しとネロが関係ない以上、ロイドの殺害にもダンジョンにゴブリンを出現させたこともネロとは無関係だってことだからな。もっともそっちは俺だって知りゃしないがな」
ガイの言葉が僕には信じられなかった。あまりに急で頭が追いつかない。どうしてどうして――
「で、どうするんだ?」
「――まさかお前がここまで愚かだったなんてね。いいだろう。お前たち入ってこい!」
フレアがそう言い放つと部屋に鎧姿の男女が入り込んできた。部屋の外で待機させていた?
「容疑者のネロを確保すれば宜しいですか?」
「……いや。事情が変わった。ハイルトン殺しに関与したことをそこのガイとフィアが自白した。よってこれよりガイとフィアの身柄を拘束! 連行する!」
「待って! それなら私も!」
「セレナ――君には別件で話があった。君のお母様から教会に連れ戻すよう頼まれていたのだ。よってお前たちセレナ嬢も丁重にお連れしろ」
「ハッ!」
「ま、待って! どういうこと? そんなの知らない! ガイ、フィア!」
叫ぶセレナは鎧姿の男女に連れられていった。直後ガイとフィアに手枷が嵌められる。
「ま、待って! こんなのおかしい! そうだガイもフィアもきっと僕を守ろうとして嘘をついたんだ。そんなことしなくても大丈夫だよ。大体こんな話そもそもデタラメすぎるんだ! そんなことしなくたって!」
「悪いなネロ――あの場はあぁするしかなかったのさ。だから――もうお前を追放した俺たちのことなんて忘れてくれ。じゃあな」
「ネロ。こんな私にも優しくしてくれてありがとうね。エクレアも友だちになってくれて本当に嬉しかった――じゃあね」
そしてガイもフィアもセレナも捕まり僕たちの前から去っていった。僕はただ黙ってその姿を見送ることしか出来なかった――
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