第207話 昇格試験の今後
「要約するとアイスと一緒で殆ど何もわかってないってことだな」
「ご、ごめんなさい」
僕の話を聞いて嘆息まじりにシルバが言い、思わず謝罪した。
「でもネロに利用価値って何なんだろうね?」
エクレアが小首をかしげる。そう確かにあの仮面の男がそんなことを言っていた。だけど僕はあいつらのことを知らないし利用されるようなこともない気がするんだけど……。
「ちょっといいかしら」
すると今度はビスクがやってきた。僕の無事を確認した後笑みを浮かべて近づいてくる。
「よかった意識が戻ったのね。体調はどう?」
「はい。おかげさまで」
体を動かして平気なのをアピールした。ビスクも安堵している様子だった。
「良かったシルバに担がれてやってきた時は驚いたのよ」
そうビスクが教えてくれた。そうか意識を失った僕を運んでくれたのはシルバだったんだ。
「そうだったんですね。シルバさんありがとうございます」
「別に礼を言われるほどのことじゃねぇよ」
シルバがぶっきらぼうに答えた。だけど本当感謝しているよ。
「それでね今回のCランク試験の事なんだけど」
「あ、そうだ! 結局どうなったんですか?」
思い出したよ。僕たちはCランク昇格試験の途中だったんだ。ゴブリンが現れたりで有耶無耶になってしまったけどね。
「結論から言うと一時中止という扱いね。それは他の受験者も一緒よ」
「一時ってことは完全に中止ってわけじゃないんだな?」
ガイが確認していた。確かに完全な中止でないならまだチャンスはあるってことだもんね。
「それはまだわからないというのが正直なところね。昇格試験でこんなことになるなんて前例がないのよ。だから管理局も対応に頭を悩ませてるみたいね」
そう言ってビスクが頭を抱えた。確かに今回かなりの大事になってしまったからね……。
「たく管理局の連中はどうせまた責任の押し付け合いでもしてんだろう」
シルバが呆れたように言った。あまり管理局にいい感情は抱いていないようだね。
「とは言え中止となったら昇格のチャンスが潰れるわけだしね。正直Cランク以上の冒険者の手が足りてないというのもあるし、何とかしてもらいたいところなのよね」
ビスクが難しい顔を見せた。冒険者にとってCランクは一つの壁と聞いたこともある。人手が足りないからと言って誰でもいいというわけではないだろうし気苦労も絶えなそうだね。
「さてと、まだまだ病み上がりだろうから今日のところはこれで失礼するわね。試験について詳細が判明したら何かしら連絡がいくと思うから」
「やれやれとにかくこれで一旦は肩の荷が下りたってところか」
ビスクの話を聞いてシルバが肩を竦めた。一時中止になると試験官の扱いはどうなるんだろうね。
「シルバ。仕事はまだまだあるわよ。報告書だって纏めないといけないわけだし」
「そういうのはお前に任せた!」
「自分でやりなさい」
シルバとビスクはそんなやり取りをしながら踵を返した。僕たちも挨拶をして二人を見送るけどそこで再び扉が開いた。
「あんた――管理局の」
「あぁ。試験官のシルバとビスクだね。これから帰りかい?」
「は、はい。今から戻るところです」
二人が扉に手をかけようとしたタイミングで僕にとってはあまり歓迎出来ない相手が入ってきた。一応は僕の兄にあたる人物――フレア・アクシスだ……。
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