第206話 アイスが伝えたいこと
「あの、僕意識失っていたみたいで結局何があったのか……」
「あぁその前に、おい早く入ってこいよ」
シルバが後ろにも振り返って扉に声をかける。直後ガラッと扉が開いた。そこから入ってきたのはアイスだった。そのとなりにはアイスと一緒だった冒険者ザックスの姿もある。
アイスはチラッと僕を見るとすぐに目を背けてしまったよ。でも僕は彼女の元気そうな姿が見れて一安心したよ。
「おい。あいつに言いたいことがあるんだろう? 一人じゃ恥ずかしいっていうからわざわざ一緒に連いてきたんだからさっさとしろよ」
「は、恥ずかしいなんて言ってない!」
ザックスに促されアイスが耳まで真っ赤にして叫んだ。なんとなくだけど表情が豊かになっている気がするよ。
「ザックスの言うとおりだ。この後のこともあるし早くしてくれよ」
「わ、わかった――」
シルバにも促されアイスがベッドに近づいてきた。自然にエクレアとフィアが場所を譲る。
「――ぶ、無事だった?」
「あ、うん。おかげさまで」
「そ、そう――」
そんな短い会話を交わしたあとアイスが目を逸らした。しばしの沈黙。
「アイスしっかり」
「そうだよ。アイスなら大丈夫だから」
「うぅ、わかってる……」
「ケッ」
かと思えばエクレアとフィアに励まされていた。遠目にガイが顔を顰めていたよ。
「――ね、ネロに助けられた。そのことには感謝している。あ、ありがとう、ね」
そこまで言ってアイスは再び顔を背けた。なんだか更に顔が紅い。だけど、そうかアイスは僕が庇って負傷したことを気にしてくれていたんだ。
「よく言ったねアイス」
「うんうん。頑張ったよ」
「うぅ。なんだか調子狂う……」
エクレアとフィアに頭を撫でられるアイス。とても照れくさそうにしているよ。
「アイスが無事で良かったよ。僕も怪我した甲斐があった」
「スピィ~♪」
僕の腕の中でスイムも嬉しそうに声を上げているよ。
「たく。自己犠牲も結構だが危うい考え方だってのも覚えておけよ」
シルバがそう僕に指摘してきた。アイスを庇ったことだろうね。でも体が勝手に動いちゃったんだよね。
「そのとおりだ。テメェはひ弱なんだからな! 庇おうとして死んだらただの無駄死にだ! 少しは考えろよ!」
うぅ、ガイにも何か怒られたよ。
「あ、そうだアイス。あの後シャドウは大丈夫だった?」
「シャドウ? 何だやっぱり他にいたのか?」
僕の言葉にシルバが反応した。どうやらシルバはシャドウがいたことは知らなかったようだけど、でもそれってどういうことだろう?
「シャドウは気がついたらいなくなっていた。あのゴブリンクラウザーが逃げて梗塞が解けたから避難したのかも知れない」
「……シャドウなら確かにこっちでも確認できてる。特に何も話してなかったけどそういうことなら話を聞かなきゃいけねぇじゃねぇか面倒だな」
シルバが銀色の頭をボリボリと掻きむしった。そうかアイスは話さなかったんだ。
「お前、何でそのこと話さなかったんだよ」
「アイには関係ない」
眉を顰めつつガイがアイスに聞いたけど、アイスはぶっきらぼうに返していたよ。
「関係ないってな。後から言われてもこっちは面倒なんだよ。いいか? 黙ってるならずっと黙ってろ! そうすれば余計な仕事は増えないんだからな!」
「この人よく試験官に選ばれたわね」
「フィア、し~――」
呆れ眼で語るフィアにセレナが人差し指を立てて注意していた。フィアは割りとハッキリいうタイプだからね。
「さてここからが本題だ。一応アイスにも聞いたけどな、あの仮面の男とゴブリンクラウザーってのか? それについて一応お前からも話を聞いておく必要があるから知ってること教えろ。簡潔にな! シャドウのことで仕事増えたんだからよ!」
シルバにあの二人について利かれたよ。ただ何か面倒くさそうにも見えるんだけどね。とは言え僕は知ってることを全て話した――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます