第205話 ネロが目覚めると――

 暗い闇の中で男の子が一人泣いていた。


「どうしたの何で泣いているの?」


 僕は思わず声をかける。男の子は僕を振り返りビクッと肩を震わせてごめんなさいと謝った。


「どうして謝るの?」

「だって僕は皆より下の人間だから。この家の皆の言う通りしないといけないって父さんが――」


 彼は涙ながらにそんなことを語った。僕は彼が言っている意味が理解出来なかった。


「嫌なことは嫌と言えばいいよ」

「そんなこと言えないよ。この家で逆らったらどうなっちゃうか……」

 

 ビクビクしながらそんなことを語る彼に僕は手を差し伸べた。


「大丈夫。僕が一緒にいてあげるから。そうだ僕と友だちになろうよ」

「え? 友だち――僕と?」

「うん。そうだ僕はネロ。君の名は?」

「僕は――」


 そこでふと記憶が飛んだ。そうだこれは僕の過去の記憶。確かに昔住んでいた屋敷にはいつも彼が来ていた。


 常にビクビクしていた彼と僕は友だちになって彼も明るさを取り戻したんだ。だけど、そうだ名前は、名前は何だっただろう、あれ何だろう段々と光が――


「ハッ! あれ? スイム、それにエクレアとフィア?」

 

 目を開けると見知った皆の顔がそこにあった。目を凝らすと少し離れた場所にガイとセレナの姿もある。


「ネロ!」

「ネロ気がついたのね!」

「スピィ~~~~~~!」


 スイムが僕の胸に飛び込んできてエクレアとフィアも笑顔で、いや少し涙ぐんでる? そうか心配掛けちゃったんだね。


 どうやら僕はあの仮面の男にやられた後、ダンジョンから外に運び出されてそのまま近くの街の治療院に連れてこられたようだね。


「全くテメェは毎度毎度怪我して運び込まれやがって。少しは体鍛えろ体をよ!」


 ガイが唾を飛ばしながら怒鳴った。うぅ、確かに心配掛け過ぎだよね。


「うん。ガイの言うとおりだね。僕も体を鍛えるよ!」

「あ、それなら私が協力するよ」

「ありがとうエクレア。もっと筋肉つけたいもんね」


 そう言いつつ力こぶを作ってみるけど全く盛り上がらず泣けてくるよ。


「でもネロが筋肉ムキムキになるのはちょっとね。似合わないと思うし」

「えぇ!」


 フィアが目を細めて意見してくれた。セレナもクスクスと笑っている。


「この馬鹿! テメェは魔法師なんだから極端に鍛えなくてもいいんだよ。そんなことに時間使うならもっと魔法を鍛えろ魔法を!」

「えぇ!」


 うぅ、結局どっちなのか。


「たく外にまで声が漏れてるぞ。うるさい連中だな」


 ガチャっと扉が開きシルバが耳をほじりながら入ってきた。そういえば――結局ダンジョンのゴブリンはどうなったんだろう? それに試験も――

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