第202話 水と氷
「アイを舐めるなぁああああぁあ! 氷魔法・絶氷の墓標!」
壁の向こうでアイスが魔法を行使した。その瞬間、青白い光が紫水晶の壁を突き抜けて広がり壁の向こうで突風の吹き荒れる音が聞こえた。
紫水晶の壁越しでもわかるほどの真っ白い霧が生じ、かと思えば紫水晶の壁に霜が生じて直後紫水晶の壁に亀裂が広がっていく。
そして僕とアイスの間にあった壁がボロボロと崩れていった。壁の向こうに生じていた冷気が一気に吹き抜け思わず肩を抱く。スイムもブルブルと震えていたので抱きしめてあげた。
「大丈夫? 寒くない?」
「スピィ~♪」
スイムが嬉しそうに鳴いた。良かった大丈夫そうだ。それにしても――凄い。あっという間に地面も凍てつき銀世界に変わり果ててしまった。
そしてアイスが僕に得意気な顔を向けてくる。
「アイに掛かればこんなもの」
静かにアイスが語った。見るとアイスが相手していたゴブリンジャイアントが二体とも氷の彫刻と化していた。やっぱり彼女の氷魔法は凄いや。
「これで壁も壊れたしアイスと一緒にあいつを倒せるね」
「勝手に決めるな。アイはお前に協力するなんて一言も言ってない」
ツンっとそっぽを向きながら冷たく返されてしまったよ。だけどあのクラウザーは僕だけでもアイスの力だけでも足りない気がするんだ。
「でもほら。あいつを倒さないと先に進めないし」
「だったらアイが一人でやる。あんなゴブリン如きアイ一人で十分」
なんとかアイスに協力してもらえないかと考えたけど、やっぱり僕に対しての敵対心は完全には拭えていないようだ。
「随分と舐められたものであるな」
そんなアイスと話していると、どこか圧の篭った声が耳に届く。見るとクラウザーの様子が明らかに変化していた。
僕たちに睨みを利かせるその姿からはフツフツとした怒りを感じる。
「どうやら我も多少は本気を出す必要がありそうであるな」
総口にした直後クラウザーの両腕が紫水晶に変化し巨大な剛腕と化した。これは確かに今までとは何かが違う。
「こんなのただのハッタリ」
「違うアイス。なんだかとても嫌な予感がする。絶対に油断しちゃ駄目だ!」
「スピィ……」
アイスに注意を呼びかける。スイムも小刻みに震えていた。本能で危険な事を感じ取ったのかもしれない。
「そこまでだクラウザー」
「――ッ!?」
その時、何者かの声がそこに割り込んだ。クラウザーの背後にはいつの間にか仮面姿の男。あいつは確か前に僕たちを何処かへ飛ばした――
そうだ。森で現れた謎の仮面の男だ。まさかあのゴブリンクラウザーの主だったなんて。ただ仮面が前と違う気がする。
あんな角みたいな物はついてなかったと思うし仮面に刻まれた模様も荒々しく感じるよ。
「おお! 我が至高の主よ。わざわざお越し頂けるとは光栄至極」
「――クラウザー。先に言っておいたはずだ。お前が力を得たのはあの御方のお力があったからこそ」
「勿論わかっております。主の主であれば我が主も同じ。それでも主がいたからこそ今の我があります」
そう言ってクラウザーが片膝をついた。やはりあの仮面の男がクラウザーの主。ただ、あの御方というのは一体――
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