第201話 スイムの力が必要

「スイムの攻撃に十分意味があったんだ。スイム僕に協力してくれる? 一緒にあの騎士から攻略しよう!」

「スピィ? スピッ! スピィ!」


 スイムが嬉しそうに返事してくれた。そして紫水晶の騎士に向けて再び水弾を飛ばす。命中した直後から水が燃焼し炎が騎士を包み込んだ。


「馬鹿め。無駄だと言ったはずであるぞ」


 呆れたようなクラウザーの声。これはクラウザーも気がついていないのか。


 僕は改めて騎士に目を向ける。だけどスイムの水で燃えた箇所には――変化がなかった。


「そんな、どうして?」

「スピィ……」

「当然だ。我が生み出しの他鎧騎士二体は無敵!」


 クラウザーが自信満々に言い放つ。スイムも再びしょげてしまっている。だけど――二体、そうだ。騎士は二体いる。よく見ると変化があるのは一体だけだ。


 もう一体もスイムの燃える水弾は受けた筈。だけど変化があったのは一体。その違いは――変化のあった一体はスイムの火だけじゃなくて僕の水柱に突っ込んでいた。まさか!


「スイムまだだ! もっとあいつらに燃える水を撃ち込んで」

「スピ……」

「大丈夫! スイムの力は凄いんだ。僕が言うんだから間違いないよ。だからお願い!」

「ス、スピッ!」


 僕の言葉で元気を取り戻したスイムが燃える水弾を再び飛ばし騎士を燃やした。ここまではさっきと変わらない。重要なのはこのあとだ!


「水魔法・瞬凍水!」

 

 アイスとの戦いの中で閃いた魔法。これを行使した。紫水晶の騎士に水が掛かると同時に凍てついていった。


「む? 水だけでなく氷魔法まで扱うのであるか」

「いや、僕が扱うのはあくまで水だよ。この氷は水の応用に過ぎない」


 僕が答えると「ふむ」とクラウザーが顎を擦り唸った。


「だが、そんなものは無意味だ。我の生み出した騎士には通じぬ」

「それはどうかな?」


 クラウザーは自分の力が完璧だと思っているようだけど、紫水晶の騎士に変化が訪れた。


 明らかに動きが鈍っている。凍ったからじゃない。そもそも今の僕の氷はそこまで強力じゃない。だから原因は別にあった。


「どういうことであるか! 何故動かない、いや、形が変化している?」

「そう。お前の操る紫水晶は確かに凄いと思う。だけど気がついた。その水晶は温度変化に弱いってね」

「何だと?」


 クラウザーの顔つきが変わった。どうやらクラウザー自身理解していなかったようだね。勿論僕もすぐには気がつけなかった。


 スイムの手助けがなければそのまま気づかずに終わっていたことだろう。この変化はスイムの燃える水だけでも僕の凍てつく水だけでも成立しなかった。


 両方の攻撃を連続で当てることで初めて効果が実感出来たんだ。最初の変化はスイムの力で熱せられた後、騎士が僕の水柱に突っ込んだことで生じた。

 

 それだけでは小さな歪みでしかなかった。だけど僕に取っては大きな変化だった。そこから熱した後更に冷やすことでより大きな歪みに変わると判断したんだ。 


 結果として僕の予想は的中したことになるね。紫水晶の騎士はギシギシと言う異音を奏で思うように動けなくなっている。


「これで騎士はもう動けないよ」

「なるほど。であれば」

 

 クラウザーが指を鳴らすと地面から紫水晶の棘が広範囲に広がった。だけど僕はとっさに水柱で上に回避。


「中々面白い手であったが我が直接攻撃すれば問題ないであろう」


 クラウザーの言う通り、今のはあくまで騎士を止める手段に使っただけだ。今のような直接攻撃相手に温度差による変化を与えようとしても無意味だろう。


 でもね、それ以外でなら意味は十分あるんだ。


「スイム! あの壁に向かって燃える水弾をぶつけて!」

「スピィ!」


 僕の願い通りスイムが紫水晶の壁に向けて水弾を当てていく。すぐさま水が燃焼し壁が火に包まれた。


「一体どういうつもりであるか?」

 

 疑問を口にしながらもクラウザーが指を鳴らし紫水晶の槍を飛ばしてきた。水の盾でそれを防ぎつつ柱から飛び降り壁の向こう側に向けて叫ぶ。


「アイス! そっちから壁に向けて氷魔法を!」

「アイに命令するな!」

「お願いだよアイス。あ、それともこの壁を壊すほどの氷魔法アイスには無理なのかな?」

「――ッ!?」


 僕は敢えてアイスを挑発するように言った。これでアイスのやる気が倍増するのを期待して――

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