第197話 進化する水魔法
アイスの手で僕は氷の中に閉じ込められた。でも不思議なことに恐怖感とかはなかった。氷の中でもわりと意識はハッキリしていてこれからどうするか考える事が出来た。
水と氷は表裏一体。元を正せば一緒の物。水は冷えることで氷になり逆に温まれば水に戻る。それを理解していれば自然と解が見えた気がした。
氷も水と一緒ならきっと僕の魔法で掌握できる。それなら――その時頭にピカンっとした閃き――閃いた! 水魔法・水温上昇!
自然と僕はその魔法を行使していた。水の温度を上昇させる魔法。だけど氷も元が水なら僕の魔法の適用内な筈だ。
僕の考えは正しかった。僕を閉じ込めた氷の温度がぐんぐん上昇し次第に溶けていく。そして温度が上昇したからか蒸気が発生し氷に罅が発生し亀裂が生じそして――割れた。
「スピィ~!」
僕が解放されたことを確認したスイムがダッシュで飛び込んできた。鳴き声を上げるスイムを僕は抱きとめる。
「心配掛けたねスイム」
「スピィ~――」
涙ぐむスイムを僕はギュッと抱きしめた。そして視線をアイスへと向ける。
「まさか、そんな筈がない。アイスの氷が水に負けるなんて……あり得ない――」
ワナワナと肩を震わせアイスがブツブツと呟いていた。氷を溶かされたのがそれだけショックだったということなんだろうね。
「違うよアイス負けたんじゃない。勝ち負けなんて無いんだ。だから僕も君の生み出した氷に干渉できた」
「黙れ! 氷魔法・逆上氷柱!」
アイスが魔法を行使した。地面から次々と氷柱が生えてくる。
「水魔法・鉄砲熱水波!」
僕は僕で新たに魔法を行使。水温上昇の応用だからか閃きは必要なくなった。元の魔法を熱するそれだけでも効果は変わるんだ。
熱い水が氷柱を飲み込み溶かしていった。見るとアイスの表情が強張っていた。
「こんなことありえない。アイの氷が水なんかに……」
「アイス。よく見てほしいんだ。君の氷は僕の熱湯と化した水で溶けて水になった」
「黙れ黙れ黙れ! だったらお前は逆に水を凍らせる事が出来るとでも言うのか!」
「……多分」
「嘘をつくな! だったらやってみろ! やれるものなら!」
「それが出来たら水と氷は一緒だと認めてくれる?」
僕はアイスを見つめたまま問い掛ける。アイスは僕の目を見て一瞬戸惑ったけど――
「もし出来るならアイは認めてやる、やれるものならやってみろ!」
アイスの答えは肯定だった。それなら――ふと僕の頭の中でイメージが湧いた。これなら――
「閃いた――」
僕がそう呟くとアイスの肩が震えた。アイスはもう心の何処かではわかっているのかもしれない。だけどそれを認めたくないだけなんだ。だからが僕がその気持ちごと溶かして見せる。
「水魔法・瞬凍水!」
僕の杖から水が吹き出した。それを見たアイスがフッとほくそ笑む。
「あはは、やっぱり駄目だった。そんなのただの水! アイの勝ち!」
「いや、よく見てよ」
勝ち誇るアイス。だけど僕の放出した水は地面を濡らすと同時に凍てついていく。アイスに掛かった水も凍りつき、辺り一面に氷が広がっていった。
「これが僕の水の力。そして水と氷が一緒だという証明だ」
「そ、そんな――」
アイスが項垂れその場に跪いた。恐らく戦意は喪失してると思う。もっともこの氷はアイスほど強力じゃない。だからこそ凍てついたアイスにもそこまでのダメージはないんだ。
とはいえこのままじゃ冷えるからね。僕は水温上昇の魔法で氷を溶かしてからアイスと向き合った。
「アイスその、大丈夫?」
「……は? なにそれ。同情のつもり? 凍すぞッ!」
凄い睨まれた! うぅやっぱり嫌われているのには変わらないよね。でも――
「これで少しは水の力を認めてくれるかな?」
「……約束は、約束。でもそれだけ。アイの目的は変わらない。今回は負けを認める。だけどいずれお前を凍す!」
「そのことなんだけど――僕を凍すという使命。それはアクシス家からの依頼?」
「――ッ!?」
アイスの表情が変わった。やっぱりだ。なんとなくそんな気はしたんだ――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます