第192話 ゴブリンロード
通常のゴブリンとは比べ物にならない。体も大きく見ているだけで圧迫感がある。
それは同時にロードとしての風格にも感じられた。だけどあんなの相手してガイたちは大丈夫なのか……。
「おい! ロードに気を取られてる場合じゃねぇぞ! こっちだってやべぇんだ!」
冒険者の一人が叫んだ。確かに――こっちはこっちでホブゴブリンアーマーとゴブリンシャーマンを相手している。油断できる相手ではないよね。
「大体あんたのさっきの魔法で逆に怒らせたんじゃないの?」
「水魔法なんかで中途半端なことしやがって!」
冒険者の何人かが僕に向けて悪態をついた。みんなどことなく苛々している。
「いい加減にして! 文句を言う前に自分でもなにかしたらどうなの!」
「スピィ!」
エクレアと僕の肩に乗ってるスイムが声を荒げた。僕のために怒ってくれているんだ。それなのに黙ってみているわけにはいかないね。
「水魔法・放水!」
魔法を行使しホブゴブリンアーマーとゴブリンシャーマンへ纏めて水を掛けてやった。
「何それ? こんなときに水を掛けるだけって何のつもりよ!」
「エクレア!」
「勿論! ハァアアアァアアア!」
冒険者が怒りを顕にしているけど、構うことなくエクレアが大きく跳躍し武芸を行使する。
「武芸・
雷を纏った鉄槌の一撃。これにより電撃が水を伝いホブゴブリンアーマーとゴブリンシャーマンを捉え感電させ大きく吹き飛ばした。
「おお! やったな嬢ちゃん!」
「雷が扱えるの? 凄いじゃない」
エクレアの攻撃を見ていた冒険者たちが歓声を挙げた。しかしエクレアの表情はすぐれなかった。
「今のは私だけの力じゃない。ネロの水魔法があったからこそよ。雷は水と組み合わせるとより強力なるんだから」
「スピィ!」
エクレアがそう説明しスイムも同意するように鳴いた。冒険者たちが顔を見合わせる。
「おい、そんな話聞いたことあるか?」
「私はないわよ。大体本来水なんて使い物にならない属性だし」
「水の紋章持ちとなんて敢えて組むことはないもんなぁ」
冒険者たちが口々に言う。エクレアの言葉を信じきれていない様子だ。だけどそんなことは関係ない。今はそれよりゴブリンだ。
「別に僕のことを信用してくれなくてもいいから、今はゴブリンを退治することに集中しましょう!」
「ギグゥゥウ――」
冒険者に聞こえるように声を大にした。その時、倒れていたゴブリンからうめき声。見るとゴブリンシャーマンが起き上がりこっちを睨んでいた。
こいつ、エクレアの強化された雷を受けてもまだ起き上がれるのか? ただ、かなりボロボロだ。
「グギャッ――」
するとゴブリンシャーマンが杖を持ち上げ、思いっきり地面に打ち付けた。一体何を? と思った瞬間、僕の足元が崩れ感じる浮遊感。
「ちょ! ネロ!」
「スピィイィィイィィィイイイ!」
そしてエクレアの悲鳴が聞こえる中、僕は肩に乗ってるスイムを庇うようにしながら穴の底へと落下した――
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