第185話 昇格試験でダンジョン探索
「……ここでお前を凍す」
「本気、なの?」
僕は今アイスと二人きりと言った状況だ。そしてアイスは僕に氷の刃を向けてきてこんなことを言っている。
目は……本気に思えた。まさかこんなことになるなんて。本当ならダンジョン探索が目的の試験だった筈なのに、今はこんなことしている場合じゃないのに――一体どうしてこうなっちゃったんだろう……。
◇◆◇
「やっぱりダンジョン探索はわくわくするね」
僕の横でエクレアが楽しそうに言ったよ。そういえばエクレアと最初に出会った時に誘われたのもダンジョン探索だったね。
最初はデートしようと言われてドキッとしたけど結局一緒にダンジョンにいきたいって話だったんだよねぇ。
あの時は追放された直後だったから一緒に組もうと言われて嬉しかったよ。
「ネロどうしたのニコニコして?」
「あ、うん。ちょっとエクレアと出会った頃を思い出してね。あの時にダンジョン探索に誘われたからこそ、僕も今こうして昇格試験に挑めてるんだなと思うと本当にエクレアと出会えたのは運命的だったなと思えてね」
「…………」
あれ? 何かエクレアが急に無口になって顔が赤いような?
「ネロってわりとサラッとそういうドキッとすること言うんだね」
「え?」
えっと小声でよく聞こえなかったんだけど……。
「ごめんエクレア。よく聞き取れなくて」
「な、何でも無いよ! それより早く先に進もう!」
「スピィ~♪」
エクレアがスイムを抱きしめながら足を早めたよ。何か気に触ること言っちゃったかな? て!
「待ってよエクレア~」
スタスタとエクレアが先に言っちゃうから追いかけるのも大変だよ!
さて、改めてこのダンジョン探索だけど、最初にくじを引いてその順番で入る時間をずらして探索に乗り込んだ形だ。
というわけで探索はバラバラになるね。しかもこのダンジョンは一層が結構広いし。
「あ、ネロ見て」
「うん。スライムだね」
「スピッ!?」
エクレアが指さしてスライムと呼んだからスイムが驚いているよ。それもそのはず。エクレアが指さした方向にいたスライムはスイムとは違うタイプだ。ヘドロ状のスライムで攻撃性が高くスイムのようなタイプと違ってとても危険とされる。
毒を持ってることもあるし金属を腐食させることもあるからね。特に接近して戦う戦士にとっては厄介だ。
「あれもスライムだけどスイムとはタイプが違うんだよ。だからそんなに焦らなくても大丈夫」
「うんうん。スイムはずっと可愛いままだからね」
「スピィ~♪」
エクレアに頭を撫でられてスイムは安堵したように鳴いたよ。とはいえ邪魔になる場所で群れてるから倒す必要はあるね。
「よし! 私が一気に!」
「待って。せっかく新調した鉄槌に影響が出たら不味いしここは僕が――よし! 水魔法・鉄砲水波!」
魔法を行使すると勢いよく噴出された水がスライムの群れを飲み込んだ。水が流れた後にはもうスライムの姿はなかったよ。
「う~んやっぱりネロの水魔法は凄いよね」
「スピィ♪」
エクレアとスイムに褒められてちょっと照れくさいね。それからも僕たちの探索は続いたよ。
「やった宝箱だね」
「うん! やったね!」
「スピィ♪」
途中で宝箱も見つけたよ。エクレアとハイタッチして喜び合う。
中には宝石が入っていたね。これは探索結果としてはどの程度かな? とにかく魔法の袋にしまっておこう。
「このままいくと地下二層かな」
「うん。下がっていってるもんね」
「スピィ~」
途中から下り坂が続いていた。こういう時はだいたい下の階層に繋がっている。坂の先は絶壁になっていたよ。やっぱりこのダンジョンは広いね。
崖にはハシゴが掛かっていた。人の手によって掛けられたものではないと思う。ダンジョンではこういうものを目にすることも多いからね。
僕たちはハシゴを下っていったのだけど――
「あれ? ガイ?」
「シッ! 静かにしろ!」
ハシゴを下りるとそこにはガイたちがいた。だけどフィアもセレナも不安そうにしている。壁に阻まれた通路があるのだけど、僕たちに忠告した後ガイが壁から顔だけ覗かせ様子を見ていた。
「何かあったの?」
「ネロ。それがね。この先にゴブリンがいるのよ」
「え? ゴブリンが?」
フィアに聞くとそんな答えが帰ってきた。まさかここでゴブリンなんて
……しかも僕たちが下りてきた通路でだよ。これは厄介かもしれないよ――
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