第180話 凍す! 再び
「お前が凍したなら、先にアイが凍す!」
「えぇ!」
アイスがロイドについて聞いてきたかと思えば何故か僕に矛先が向けられたよ!
一体どういうことなのか。唐突すぎて意味がわからないよ!
「待って待って。えっと君ってロイドと仲が良かったっけ?」
前に一度ロイドが話しかけてきていた時には彼女もいてそんな雰囲気は感じなかったんだけど……でもロイドのことで怒ってるということは、もしかしたら何かしら繋がりがあったのかも? そんな僕の懸念もよそにアイスは答えてくれる。
「あんな奴のことは知らない。だがお前が殺したならお前は罪人として追われ命を狙われる。それならアイが先に凍す!」
とんでもない理由だったよ! それ僕が犯人前提だよね! あ、だから聞いてきたのか。
「いや、えっと、僕はやってないよ」
「本当か? 嘘ついたら凍す!」
「結局凍すの!?」
いや、勿論嘘はついてないけど本当僕のこと凍す気満々だよね。
「コラ! またそんなこと言って!」
「う……」
アイスに妙な絡まれ方をしていた僕だけど、そこにフィアがやってきてアイスに注意を始めた。
「アイスもCランク冒険者を目指しているなら、そんな物騒な言い方は駄目よ」
「でも、こいつが犯人なら……」
「それはないわよ。ネロがそんなことするわけがないもの」
「スピィ~」
エクレアも来てくれてアイスに誤解だと話してくれた。スイムも僕の肩で跳ねながらアイスに訴えかけてくれているね。
「なんでも決めつけは良くないですよ」
「うぅ……」
セレナもアイスを諭していた。口調は丁寧だし笑顔なんだけど妙な圧があるんだよね。
「全くあいつはあいつでわけがわかんねぇな。お前、おかしなのに好かれすぎだろう」
「あはは……」
ガイが僕の横に立ってそんなことを言ってきたよ。
「そうだ! せっかくだからアイスも一緒に夕食食べようよ」
「いや、なんでそうなるんだよ」
エクレアが手をパンっと叩いて口にするとガイが突っ込んだ。だけどそんなガイをフィアがじろりと睨む。
「何よガイ。エクレアの提案に文句があるの?」
「お前な……今さっきまでネロのことを殺すとか言ってた女だぞ?」
「ガイ。彼女は殺すなんて物騒なことは言ってませんよ。あくまで凍すです」
「いや! ニュアンスでなんとなくわかるだろう! そこは」
「ガイ。凍すですよ」
「いや、だから」
「凍す、ですよね?」
「……そ、そうだな――」
結局セレナに押し切られたガイだよ。何かガイはセレナには弱かったりするよね。
そんな話をしていると試験官からの声も届く。
「とにかく管理局からの決定がおりるまではお前ら大人しくしてろよ。試験が終わってからな好きにしていいからよ」
「いいわけないでしょう! あなた達もCランク冒険者を目指しているなら節度をしっかり保ってよね」
シルバのいいぶりにビスクが頭を抱えていた。確かに試験が終わったからと言って好き勝手していいわけじゃないよね。
というわけで今晩は野宿となり、僕たちも森で食材を集めたりして夕食を摂ることになったんだけど――
「ガッハッハ。だからよ俺たちもしてやられたってわけよ」
「いてぇよおっさん」
「誰がおっさんだ! 俺はまだ二十八歳だぞ!」
「それでも俺から見たらおっさんだっての」
ノーダンに背中を叩かれてガイが苦笑気味に言い返していたよ。何か猛獣狩人の三人も僕たちに合流してくれて色々な話をしてくれているのだけど、その中でガイたちと戦ったことについて教えてくれたんだよね。
「でもガイたちは上手いこと彼らの素材を取ったんだね」
「……それはセレナの功績だ。戦いではほとんど何も出来ずやられたんだよ。畜生が」
悔しそうにガイが答えた。話によるとガイもフィアも彼らに挑んだらしいけど全く歯が立たなかったそうなんだよね。
ガイの実力は僕もよく知っているから驚きだよ。だけどそこからセレナが機転を利かしてお酒を準備して猛獣狩人に話を聞きたいと持ちかけたらしい。
ちなみにお酒は近くの果物を利用して即席で作ったんだとか。セレナの生魔法には発酵を促すのもあるようでそれで出来たようだね。
そしてお酒で気分が良くなって油断したところで素材を、まぁ奪ったということなんだよね。
でも猛獣狩人は別にそのことに怒ってなくてむしろそれだけ貪欲に素材を奪いに来たことを褒めてさえいたよ。
そういった、したたかさも冒険者には必要なんだとか。なるほどね……僕には足りない点だと思う。
もっともそうやって素材を奪った直後にビスクからのメッセージが届いたらしいんだけどね。
「全く。まさかお前がこんな輪にくわわるなんてな」
アイスの横で男性が話しかけていた。アイスと合流していた男性だね。仲間のようなんだけど――
「……うるさい黙れ。凍すぞ」
「チッ、相変わらzう可愛げがねぇな」
だけどあまり仲がよさそうには見えないんだよね――
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