第173話 頼りになる仲間
レイルに攻撃が通じない原因、それはわかった。だが問題はレイルの持つ紋章の特性をどう打破するかだった。
冷静に考えればエクレアにとってレイルとの相性は最悪だ。レイルは土の鎧さえ纏っていればエクレアの攻撃は通用しない。
だが逆に言えば、土の鎧さえなんとかできればレイルを倒すことは可能だということでもある。
しかしエクレアは未だに、どうやって土の鎧を処理すべきか思いついていない。
「どうした! 分かった風なことを言っていた割に防戦一方ではないか!」
レイルの攻撃を捌きながらエクレアも所々で反撃するが、効果は薄い。電撃が効かないにしてもせめて鉄槌で鎧さえ破壊できれば、そんなことを考えていたその時だった――ドゴッ! といつもと違う重たい衝撃。
「何ッ!?」
思わずレイルが飛び退いた。その表情に曇り。見ると鉄槌が当たった箇所が砕け罅が入っていた。
「馬鹿な。俺の土武装の強度は完璧な筈だ!」
動揺するレイル。一方でエクレアも今の手応えがなぜかを考えていた。そして――思い出した。
「そうかスキルジュエル――」
そう。エクレアは現在腕輪に会心のスキルジュエルを嵌めていた。これは攻撃した際に防御を無視し威力を跳ね上げることがある――今まさにその効果が発動したのだ。
「これはチャンスね!」
エクレアがレイルとの距離を詰めにかかる。
「武芸・爆砕戦斧!」
しかしレイルが斧を振り下ろすと地面が爆散し、砕けた土塊が周囲に拡散した。土煙によって視界が悪くなり衝撃でエクレアの動きも一瞬とまってしまう。
「まさか武装が砕けるとはな。だがこれもすぐ修復できる!」
視界が確保されると既に距離を取っていたレイルが叫んだ。見ると確かに徐々に砕けた箇所が修復されている。
「間に合わない――」
エクレアが呟いた。この距離では装甲の修復までにエクレアの攻撃は届かない。悔しそうに歯噛みするエクレアだったが、そのとき茂みから何かが飛び出しレイルの装甲に掛かった。
「何だ? 水だと?」
「スピィ!」
茂みからスイムが顔を出していた。スイムが水を放出してレイルに掛けたのだ。
「この雑魚が!」
「スピィ!」
レイルが怒鳴るとスイムがすぐに茂みの中に隠れた。レイルが憤っていた。そしてそれをみたエクレアが、フフッ、と笑う。
「貴様何がおかしい!」
「スイムも頼りになる仲間だって改めて思ったのよ。ありがとうねスイム」
隠れたスイムに向けてお礼を言いつつエクレアが鉄槌を握りしめる。
「いくわよ」
「ふん。もう装甲は直った。何をしたかしらんが二度と同じ真似はさせんぞ」
「大丈夫。もう会心が出なくても――ダメージは通る!」
エクレアが疾駆し、一気に距離を詰め雷を纏わせた鉄槌を振るった。しかしレイルも流石に直撃は避け掠った程度に終わった。
「甘い。こんなもの食らわなければ――グァアアァアアァアアア!」
得意がるレイルだったが直後、レイルの全身がバチバチと弾けその口から悲鳴が漏れた。
「ば、馬鹿な。一体何が――」
片膝を付きレイルが再度、正面のエクレアを睨む。しかしレイルの表情は困惑に満ちていた。
「どうやら何がおきたかわかってないようね。貴方の欠点は自分の能力をよく把握してないことよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます