第172話 ハイブリッドVSハイブリッド
「行くぞ! 武芸・土流撃!」
レイルが斧を振り下ろした。途端に土砂が波のようにエクレアに迫った。
「はぁああぁああ!」
それを認めエクレアが跳躍し攻撃を避けた。上空からレイルに迫る。
「武芸・
そして雷を落としながらレイルに鉄槌を食らわせた。
「これでどう!」
攻撃は直撃した。手応えもあった。これでダメージに繋がった筈、そう考えたエクレアだったが。
「ハハッ、何だこれは。今何かしたのか?」
「え、うそ――」
レイルには全く効いている様子がなかった。エクレアに動揺が走る。
「どうやら俺の武芸の方が勝っていたようだな。この土の鎧にはあらゆる攻撃が通用しない」
「土の鎧――」
そこで改めてレイルを見た。確かにまとっている茶色い鎧はよくみると土から形成された物に思える。
「もしかしてそれも武芸で? 貴方一体幾つ武芸を持ってるのよ」
エクレアの問いかけにレイルが自身に満ちた顔を見せる。
「聞いて驚け。俺が閃いた武芸は――七だ」
「――七」
エクレアが若干驚いたように呟いた。魔法にしても武芸にしても閃きによって紋章に見合った物を閃く。しかし閃く数には個人差がある上、そうそう閃くものでもない。一生かけて三個か四個ひらめけたら上等だと言われるほどだ。
それを考えたならレイルの閃き数七個は驚愕に値する。
「……なんだ? もっと驚くかと思ったが――」
しかしエクレアの表情を見たレイルは不満を漏らした。確かにエクレアも驚きはしたがその反応は静かなものだった。
「それは、まぁ。七個も閃くのはすごいけどすぐ近くにもっと閃いている仲間がいるもの」
「何だと? デタラメ抜かすな! 貴様の仲間などあの無能な水の紋章持ちしかおらんではないか!」
レイルが不愉快そうに眉を顰めた。冷遇されている水の紋章持ちの方が優れているというのが許せなかったのだろう。
「そう言われても事実だから仕方ないじゃない。ネロはもっと閃いている。でもそれは私とは関係ない。だから貴方の閃き数は純水に凄いと思ってる」
現在エクレアが閃いた武芸は三個だ。レイルの半分以下であり数では完全に劣っている。
「でも勝負は武芸の数だけでは決まらない」
「フンッ。強がりだな。事実貴様の技は俺には通じないではないか」
「そんなことやってみないとわからない。はぁああぁああ!」
エクレアがレイルとの距離を詰め電撃を纏った鉄槌を振るった。レイルに直撃するがやはり効き目がない。
「無駄だと言っただろう! 武芸・岩石斧」
するとレイルが岩をまとった斧で攻撃してきた。それを受け止めるが――
(重いッ!)
受け止めきれずエクレアが吹き飛んだ。
「ハハッ、見よ! これで貴様はおしまいだ!」
「く、まだよ! 武芸・
エクレアが起き上がり再びレイルに武芸を行使。しかしそれでもダメージが通らない。レイルが思い切りエクレアを弾き飛ばしエクレアが距離を離し着地した。
「やれやれ。馬鹿の一つ覚えみたいに同じ技ばかりか。やはり武芸は数だ。少ない武芸では私の武芸を上回れん」
レイルが呆れたように言い放つ。一方でエクレアが何かを思いついたように口を開く。
「そうか。その土の鎧で私の電撃が地面に逃げてるんだ――」
それがエクレアが導き出した答えだった。エクレアの攻撃は一見すると意味もなく無駄に連発しているだけに見えた。だが実際は観察していたのだ。自分の攻撃がなぜ通じないのかその理由を解明するために。
そうして行き着いた答えがそれだった。鉄槌そのものが鎧によって防がれるのはわかる。だが本来なら武装していようが電撃は鎧を抜けて本体にダメージが行くはず。それが出来ない理由は電撃が土の鎧から肉体ではなく地面に流れていたからだった。
「……地面に逃げてるだと? 何をわけのわからないことを」
「――そう。どうやら武芸は覚えていても貴方は理解していなかったんだね」
エクレアがそう答えた。レイルの反応を見て判断したのだろう。しかし、だからといって問題が解消されたわけではない。エクレアが導き出した答えは、つまるところ電撃ではレイルにダメージを与えられないということを証明したに過ぎなかったからだ――
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