第171話 スイムをいじめるのは許さない
「スイム大丈夫? 怪我してない?」
エクレアは右手に鉄槌を持ちながら左手でスイムを抱きかかえていた。レイルの攻撃が当たる直前割り込みスイムを抱きかかえた後、飛び退いたのだ。
「スピィ~スピィ~!」
心配そうなエクレアに対してスイムが体を擦り寄せ鳴き声を上げた。よほど怖かったのだろうとエクレアが抱きしめてる手でゆっくりと撫でた。
そしてキッとレイルを睨む。
「一体どういうつもり! スイムにこんな真似して!」
「フンッ。俺はただ魔物を一匹狩ろうとしただけだ。冒険者としては当然のことだろう?」
「貴方、私たちとスイムが一緒にいることぐらいわかってたわよね? それにスイムみたいなタイプは人に危害を加えないわ。冒険者ならそれぐらい常識でしょう!」
「チッ」
レイルが舌打ちで返した。眉間にシワを寄せ気に入らないという感情がありありと表れている。
「だとしてもそいつは危険だ。俺に向けて妙な攻撃を仕掛けてきたからな。危なく火傷するところだったぞ」
「スピィ~! スピィ~!」
レイルの発言に抗議するようにスイムが声を上げた。それを認めたエクレアがレイルに厳しい視線を向ける。
「そんなの貴方が危害を加えようとしたからでしょう? スイムはなにもないのにそんなマネはしない」
「そんなもの知ったことか。そうだ、そのスライムは危険なんだ」
ふとレイルがニヤリと口元を歪め持論を語りだした。
「だから今すぐ排除しないとな。冒険者として当然だ」
「そんなこと私がさせるわけないじゃない」
「なるほど。つまりお前はその危険なスライムを庇うわけだな。お前そのスライムを使って一体何をする気だ? これはその体にしっかり聞いてやらないとな」
その瞬間レイルのターゲットがエクレアに変わった。そのことはエクレア自身が理解していた。
「――暴論もいいところね。そこまでしてスイムを傷つけたいの?」
「フンッ。スライムなんて雑魚ただの憂さ晴らしでしかなかった。だが、こうして小生意気な女をしつけるチャンスがやってきたのだからな。活かしてもらうぞ」
嗜虐的な笑みをレイルが浮かべ、エクレアが顔を強張らせた。斧を握り、今にもレイルが襲い掛かろうとしている。
「スイム隠れていて。もうこいつは私しか見えてないみたいだからね」
「――ッ! スピィ! スピ~!」
エクレアが地面にスイムを下ろすと心配そうにスイムが鳴いた。
「大丈夫。私だってCランク試験に挑む冒険者よ。こんなところで負けていられない」
「ハッ。新しい武器を作って無駄に自信をつけたか。大した実力もない雑魚がそんなものを持ったところで宝の持ち腐れだとしっかり教えてやろう」
レイルの発言でエクレアはなぜ自分が狙われているのかわかった気がした。そしてエクレアが改めて目で大丈夫とアピールするとスイムもコクリと頷き茂みの中に身を隠した。
「いつまでそんなスライムにかまけてるつもりだ!」
距離を詰めレイルが攻撃を仕掛けてきたがその斧をエクレアが鉄槌で受け止めた。
「貴方、随分と粘着質なのね。ノーランドでのことを未だに根に持ってるなんて」
「黙れ。この俺が貴様のような女ごときより冷遇されるなどあってはならないのだ!」
「そういう捻くれた考え方だから依頼を断られたんじゃない?」
「黙れ! 武芸・戦杭!」
エクレアを押しのけ、レイルが武芸を発動させた。地面に斧を叩きつけると同時に尖鋭した石のスパイクが周囲から飛び出した。
「武芸・雷装槌!」
しかしエクレアも負けじと武芸で鉄槌に電撃を纏わせ振り下ろした。石のスパイクが粉々に砕け散る。
「――貴様、俺と同じ
「やっぱり貴方もそうだったのね。こんな偶然があるとはね――」
エクレアは雷と槌の複合属性持ちであり、一方でレイルは斧と土の複合属性であった。
「だったらなおさら負けられないわね」
「ふん。貴様などこの俺様の足元にもおよばん。それを今から思い知ることになる」
こうして
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