第174話 新たな閃き
「俺が能力を把握していないだと――ふざけるな! 俺はカートス伯爵家のエリートだ! それを貴様如きが偉そうに!」
エクレアに指摘されたことでレイルが激昂した。どうやら今の指摘がレイルのプライドを傷付けたようだ。
「そういうところよ。自身の欠点に目を向けない限り貴方に成長はないわ!」
エクレアが駆け出しレイルに向けて鉄槌を振るった。土の装甲が残っているが関係はなかった。当たった瞬間バチバチと弾け悲鳴を上げレイルが後ろに飛ばされていく。
「馬鹿な、な、なぜだなぜ……」
レイルは不可解といった表情だった。彼にとっては思いもよらないことだろう。エクレアの攻撃が突然効くようになったのはスイムに掛けられた水が原因だ。
これによってたとえ土の装甲があろうと関係なく感電するようになったのである。レイルが小馬鹿にしていたスイムの援護が思いがけない効果を生んだのである。
「次で決める」
「ククッ、あ~はっはっはっはっは!」
突然レイルが頭に手を添え笑い出した。突然のことにエクレアも目を丸くさせている。
「何なの突然笑いだして?」
「フンッ。これが笑わずにいられるか。よもや貴様ごときに奥の手を使うことになるとはな。全く腹ただしい実に腹ただしい! だからこそ笑わずにいられなかったのだ!」
「奥の手――?」
レイルが不敵な笑みを浮かべるとエクレアの顔に緊張感が走った。しかしすぐに構えをとる。
「光栄に思うがいい。貴様如きがこの俺に少しでも本気を出させたことをな。武芸・土分身!」
レイルが新たな武芸を披露した。途端に地面からレイルそっくりの土の分身が姿を見せた。
「これが貴方の奥の手?」
「そうだ。この分身は俺そのもの。武芸も俺と同じものを扱える。この意味がわかるか?」
レイルが自信満々にそう告げた。エクレアが緊張した強い表情を見せた。
「大丈夫――ダメージは通るんだから」
しかしエクレアは自分に言い聞かせるようにそう呟いた。例え分身を出そうと本体の状態は変わらないからだ。
「行け!」
しかしレイルは分身を前に出してエクレアに攻撃を仕掛けてきた。
「くっ!」
エクレアが電撃を纏った鉄槌で反撃するが完全に土でできた分身には効果が薄く、それでいて装甲が厚かった。
「武芸・土流撃!」
しかもレイル本体はエクレアの攻撃が届かない位置から武芸を放ってくる。エクレアは分身の近接攻撃とレイル本体の遠距離からの攻撃とに対処しなければならない。
「はぁああぁあ!」
しかしエクレアも負けてはいなかった。分身に対処しながら活路を切り開こうと果敢に攻撃を続けた。そしてその時に狙い定める。
そしてその時が来た。エクレアは動き回りながら自身の奥の手が決まる瞬間を図っていた。エクレアが使える武芸で一番威力の高い武芸・
消耗が激しい為、できれば試験後半まで温存しておきたかった技だが四の五の言っている場合ではない。
「来た、いま――」
エクレアが身構えたその時だった――分身が振るった斧が地面に当たり、かと思えばエクレアの足元が沼と化しズブズブと足が埋もれていった。
「しまったこれじゃあ!」
「ハッ。貴様の顔でわかったぞ。何か企んでるなと。だから分身に武芸・震泥撃を使わせたのだ。これで思うように動けないだろう。貴様も終わりだ」
「クッ!」
エクレアが悔しそうに奥歯を噛み締めた。奥の手を決めようにもこれでは思うようなダメージは期待できない。
(駄目だ足が取られて――私にもっとパワーがあれば、もしくは圧倒的なスピードそれこそ雷のような……)
そう考えたその瞬間だった。エクレアの脳裏に久々の感覚。そしてエクレアは脳裏に浮かび上がったそれを口にした。
「閃いた! 武芸・電光石火!」
エクレアの体が突如、バチバチと放電したかと思えば、一気に加速。泥からも抜け出しレイルと分身を中心に縦横無尽に駆け出した――
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