第166話 杖魔法を考える

 僕の魔法はロイドの杖に吸われた。そのうえで杖に吸われた僕の魔法を返してきた。

 つまりロイドの杖魔法というのは相手の魔法を吸い込んで自由に扱えるということ?


 だとしたらとんでもない気がする。ただ何か違和感があるんだよね。


「どうしたんだい? 僕の魔法に驚いて手も足も出ないか!」


 ロイドが杖を振り上げると風が鷹となり僕に向けて襲いかかってきた。さっきとまた違う魔法か。


「水魔法・水守ノ盾!」

「面倒だなそれ。もらおうか!」


 僕が魔法で生み出した水の盾がロイドの杖に吸い込まれた。当然盾はなくなり風の鷹をモロに食らってしまった。


「うわッ!?」


 衝撃で僕の身が大きく後方にふっとばされてしまう。バサバサという音を耳に残し小枝と葉が顔に細かい傷を付けていった。


「はぁはぁ――」

「フンッ。ゴキブリみたいにしぶといやつだね」


 今のでちょっとした傷はついたけど意識はある。体も動く。新しいローブの強靭さに救われた。本当に新装備には感謝しかない。

 だけど問題はある。このロイド最初から随分と自信ありそうではあったけど根拠のない自信というわけじゃなかったんだ。


 しかも魔法を吸収してしまうという効果は魔法師同士の戦いで優位に働く。魔法そのものを封じられているに近い。


 だけど――杖魔法は本当にどんな状況でも吸収するのだろうか。そもそもロイドは僕の魔法を吸収した時、魔法補充と言っていた。それに魔法を返した時には魔法解放だった――


 ちょっと試してみようか――


「水魔法・水槍!」

「フンッ。何度やっても無駄だよ」


 僕から放たれた水の槍をロイドが杖に吸収した。ここまではさっきと同じ――


「ほら返すよ。魔法解放!」

「水魔法・水槍連破!」

「なに!?」


 ロイドが驚いている。僕の魔法を吸収した瞬間、彼の杖から水槍が放たれた一方で僕が放ったのは水槍を連射する魔法。ロイドが放った一発だけだと物量で負けることになる。


「くそ! 魔法解放!」


 ロイドが使ったのはさっき僕から吸った水守ノ盾だ。それで僕の魔法を防いだ。


「生意気だねお前」

「そう? でもちょっとわかったよ」


 今のでロイドの属性について多少はわかった。まず魔法解放を使った直後はおそらく吸収が出来ない。それが出来るなら今の僕の魔法をまた吸収すればいいだけだ。


 だけどそれはせず盾で防いだ。だから僕の推測は間違いないと思う。


 後気になるのは――よし色々やってみよう。


「水魔法・水剣」


 魔法で杖に水をまとわせ剣にした。以前とは少々形が違うけど、杖を柄に見立てることで使いやすくなる。


 気になったのは果たしてロイドはどこまで魔法を吸えるのかということだ。最初にロイドが水ノ鞭を見た時に馬鹿にしているように感じがけど、もしかしたら単純に嫌がっただけなのかもしれない、そう考えたんだ。


「行くよ!」


 水の剣を手に僕は駆け出した。


「――魔法解放!」


 ロイドが叫ぶと杖から火の矢が飛び出てきた。杖で薙ぎ払いロイドを攻める。


「あぁもう! 面倒な奴だな! 杖魔法・杖強化!」


 ロイドが魔法を行使。これは――今までのとは違う。僕の剣をロイドが杖で受け止めた。杖を強化して強度があがったのか。


「剣なら勝てると思ったなら甘いんだよ。こんなこともあろうかと兄さんに武器の扱いも教わってたんだからね!」


 言うだけあってロイドの杖さばきは巧みだった。これは僕には分が悪い。杖で水の剣を生み出せても剣に自信があるわけじゃない。


「お前なんかにストックを使い切りたくないんだよ!」


 ロイドが叫んだ。ストック――そういうことか。おかげでだいぶ見えてきたね――ただロイドの杖魔法にはまだ手札が残ってるかもしれないから油断出来ないね……。

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