第165話 ロイドの杖属性
「貴様はここで僕が倒して試験から排除してあげるよ。残った彼女たちのことは僕に任せておけばいいさ愛人として大切にするからね」
ロイドが髪を掻き上げながら自分勝手な発言をした。そもそもエクレアにしてもフィアにしてもロイドの愛人になるなんて言っていない。
ロイドが髪を掻き上げながら自分勝手な発言をした。そもそもエクレアにしてもフィアにしてもロイドの愛人になるなんて言っていない。
一応フィアが賭けに乗ってロイドが勝ったらデートをする約束はしたけどそれだけだ。
ただ本人が臨んでいない真似を僕はさせたくない。だから僕はこの賭けに負けられない。その為にも絶対に合格してCランクに――あれ?
「……あのさ。一つ確認していい?」
「何だい? 今更怖気づくとは流石無能な水属性」
相変わらず、僕が不遇扱いされている水の紋章持ちだからって下に見てくるね。まぁそれはこの際どうでもいいんだけどね。
「別にそういうんじゃないよ。ただ、この試験でもし僕もお前も合格したらこの賭けは成立しないんじゃない?」
「…………」
ロイドが黙り額から汗がにじみ出てきた。どうやらその可能性は考慮していなかったようだね。
「はは。問題ないさ。なぜなら貴様はここでこの僕に敗れるからだ。そうだこの場でもう決着をつけてしまえばいい。僕が勝てば彼女たちのことは諦めたまえ!」
「いや、流石に勝手すぎない?」
「そんなことはないさ。大体ここで負けた時点で貴様の素材はすべてこの僕がもらう。つまり貴様はこの試験で生き残れない」
確かにルール上、もしここで敗れたりしたら素材を持っていかれるのは間違いないだろう。
ただ残り時間はまだあるし、ここで素材取られたからと言って試験に落ちるとは限らない気もするよ。
「その理屈だと僕が勝てばお前の素材を奪ってもいいということでいいんだよね?」
とはいえ、そっちがその気ならこっちも遠慮はしていられないからね。そこははっきりさせてもらう。
「当たり前さ。ま、万が一にもありえない。この僕の杖の紋章の力にかかれば水の紋章なんて雑魚以外の何物でもないのさ」
そういってロイドが僕に杖を向けてきた。
「杖魔法・魔法解放!」
ロイドがそう声を上げた瞬間、杖の先端から岩石ほどの大きさの火球が飛んできた。
これは最初の火球よりも大きい。
「水魔法・水守ノ盾!」
再度魔法で水の盾を生み出し火球を防いだ。こいつは火の魔法が得意なんだろうか。だとしても似たような魔法は――
そう思っていたのだけど、火球は盾に当たると同時に爆発した。衝撃で僕の体が後方に飛ばされる。しまった! 盾でも発生する衝撃波までは防ぎきれない。
僕と盾との距離が近すぎた――いや、もしかしてロイドはそれも計算して魔法を?
「杖魔法・魔法解放!」
更にロイドの声が上がった。爆発で土煙が上がり視界が悪い。ロイドの居場所は声から判断するしかない。
おそらく左に移動した。まさかまた火球か――そう思っていたら頭上から何かが降ってきた。
これは鋭い岩の破片の雨! あいつ火属性だけじゃないのか。
「水魔法・水ノ鞭!」
杖を振って水の鞭を生み出し次々と降ってくる岩の破片を打ち払っていく。生まれ変わった杖のおかげか前よりも多くの鞭を生み出せた。それでも破片の数は多めで簡単には捌ききれない。
それにしてもこいつ火だけじゃなくて土属性まで――よく考えたらロイドは杖の紋章持ちと言っていた。火や土といった単一属性とはどう考えても異なる。
つまり杖の紋章は複数の属性を扱う? まさかそんな、それじゃあまるで――
「驚いたね。まさか僕の魔法を二発も使ったのにまだ立っていられるなんて」
ロイドが目を丸くしていた。捌ききれない破片が幾つか当たったのだけどそこまでのダメージではない。新調したローブのおかげだろう。かなり頑丈になっている。これは仕立ててくれたセンツに感謝だね。
「――それにしてもなんだいそれは? 妙な物を出して全く美しくないね」
僕が水で生み出した鞭を見てロイドが顔を顰めた。よっぽど僕の水魔法が気に入らないようだね。
「そう――じゃあこれはどうかな? 水魔法・水槍!」
今度は僕から水の槍を放った。ロイドに向けて一直線に突き進んでいく。
「やれやれ、こんなもの本当は取りたくはないけど――仕方ないね! 杖魔法・魔法補充!」
そう言ってロイドが杖を振り上げた――すると僕が放った水の槍がロイドの持つ杖の中に吸い込まれてしまった。
「こんなものさっさと返すよ。杖魔法・魔法解放!」
ロイドの杖から今度は今僕が使った水の槍が放たれた。
びっくりして盾を生み出すのも忘れていたけど、なんとか横に飛んで槍を避けた。だけど、ロイドの杖属性ってまさか――
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