第162話 ガイが挑むはCランク冒険者

「随分と威勢がいいな。だが嫌いじゃないぜ」


 ノーダンが笑みを浮かべながら三人の印象を口にした。全身からはどことなく余裕が感じられる。


「ま、これも予定にはあったものね」

「で、お前らの名前は?」


 肩をすくめるババロア。続けてケッタソイが三人に問いかけた。


「俺は栄光の軌跡でリーダーやってるガイだ」


 Cランク冒険者たちに問われガイが答えた。その様子を見ていた二人の少女がやれやれと嘆息しつつ彼に続く。


「私はセレナです。そのガイが失礼な物言いをしてしまいごめんなさい」

「いや、なんでお前が謝ってんだよ」


 頭を下げるセレナを見てガイが怪訝な顔になる。


「私はフィアよ。全くこんなことにつきあわされる身にもなって欲しいけどやるからには全力でいくわよ」


 自己紹介する三人を見てケッタソイの表情が険しくなる。そんなケッタソイの肩を叩きつつノーダンが言う。


「そんな顔するなよケダルイ。ちょっと揉んでやるぐらいに考えておけばいいんだからよ」

「ケッタソイだ。泣くぞ」

「こんな時ぐらい間違わずに呼んであげなさいよ全く」


 やれやれといった顔を見せるババロア。そして改めて三人に目を向けた。


「とは言え、油断は禁物ね。確か栄光の軌跡は勇者の紋章を授かった子がいたはず」

「あぁ。俺がそうだよ」

「――私達のこと知っていたのですね」


 剣を背中に持っていきガイが答え、セレナが意外そうに呟く。


「……そりゃまぁね。あなたたちもそれなりに有名よ。ただ、ちょっと自意識過剰気味かもね。世界を知らなすぎるわ」


 挑発するようにそれでいてどこか諭すようにババロアが言った。


「自意識過剰か。結構じゃねぇか。自分に自信がないような奴が上にいけるわけがねぇからな」


 ババロアの話を聞いてもガイは気にすること無くむしろ自ら受け入れる姿勢を見せた。


 そんな彼の様子を見たノーダンが、ほう、と顎を擦る。


「なかなかおもしろい考えだ。俺はキライじゃないぜ。よっしゃだったら俺が相手してやるか」


 そう言って首を鳴らしノーダンが斧を手に取り前に出た。


「おいおいおっさん。一人でやるって舐め過ぎだろう」

「はっはっは。安心しろ。俺は自分の力をわきまえてるからな。お前らは全員でかかってきていいぞ」


 ノーダンの返事にガイの眉がぴくっと跳ねた。


「ガイ……まさかあんた一人でやろうってんじゃないでしょうね?」

「ガイ。ここは意地を張らずに」

「おいおっさん。後悔すんなよ。こっちはあんたの言う通りパーティーでしっかり相手するつもりだからな」


 フィアとセレナはガイの発言に目を丸くさせた。二人とも意地っ張りのガイのことだから自分も一人で挑むといいだすと思っていたのだ。


 だが実際は違った。やはりこれまでのことでガイの心境にも変化があらわれているのかもしれないとセレナは考えた。


「――そこの女は世界を知らない言ってたがな.

身にしみて思い知ってんだよ。俺なんざ実力がまだまだだとまざまざと見せつけられた。だから――未熟なりの戦い方をするまでだ。行くぞお前ら!」


 そしてガイたちがノーダンに向けて挑みかかった――

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