第161話 第161話 森の格上冒険者
「全く。わざわざ俺たちが狩り出されるなんてな面倒なこったぜ」
戦斧を肩に乗せて歩く大男がやれやれといった顔で愚痴った。
「仕方ないじゃないノーダン。それにギルドからの指名よ。寧ろ光栄に思わないと」
そんな彼に向けて魔法師といったローブ姿の女性が答えた。
「そうはいってもなババアラサーよ」
「ババロアよ! あんたいよいよわざとでしょそれ!」
ババロアに言葉を返すノーダンだったが、途端にババロアが怒りを顕にした。ノーダンはよく名前を間違える。
「うん? そうだったか?」
そんなやり取りをしながらも森を歩いていたのはCランクパーティーの猛獣狩人だった。
三人はこの日、Cランク昇給試験の一環としてここまでやってきていた。彼らの目的は素材を手に入れておくこと。
もっとも彼らはリストの内、Sランク素材を先に集めるよう言われている。
その素材を有しているのは魔獣であり、Cランクと言えど油断すると危険な相手だ。これはいうなれば昇格試験に挑む冒険者にとっては厳しい相手ということでもある。
「気をつけろ。近くに魔獣の気配を感じる」
そこでこれまで言葉を発していなかった仲間が目を光らせた。警戒心を高めている。
「お前誰だっけ?」
「ケッタソイだ。殺す!」
「ゲシュタルトホウカイ? そんなのいたか?」
ノーダンが小首を傾げケッタソイは涙を流していた。ババロアがケッタソイの肩を叩いて励ましている。
そうこうしている間に三人はこの森を拠点に活動する魔獣を見つけていた。
双頭の大猿である。凄まじいパワーを誇る上、この魔獣は自由に分裂し二体になって襲ってきたりもする。
魔獣は三人の姿を見るとすぐさま分裂して襲ってきた。
「分裂した――だがそれがチャンス」
ケッタソイがモーニンスターを振り回し大猿に当てた。彼は活力の紋章持ちであり回復要因であると同時に自らも強化して戦うことが出来る。
「引力魔法・愛の吸引!」
そしてババロアが魔法を行使。分裂したもう一匹が引き寄せられそれを狙ってノーダンが戦斧を構えた。
「武芸・
豪快に斧を振ると大猿が切り株状態になって地面に落ちた。
フッ、とノーダンが得意がるが、そこへババロアがカッカした顔でやってきた。
「あんたやるなら少しは後の事考えなさいよ! これじゃあ素材が台無しじゃない!」
「……ま、細かいことは気にするなって。それにしてもいつも思うんだがお前の魔法の名前痛々しくないか?」
「あんた本当に殺すわよ」
額に青筋を浮かび上がらせながらババロアが言った。そうとういらいらしているようである。
「こっちは終わったぞ。素材も綺麗なものだ」
「おおマジか。さすがだなモブオ」
「ケッタソイだ……泣くぞ!」
「もう泣いてるじゃない……」
ババロアがどこか哀れみを滲ませた目で彼を見ていた。
「随分と愉快な連中だな。これがCランク冒険者か?」
そんな三人に向けて同じく三人の冒険者が姿を見せ声を掛けてきた。それはどこか挑発的な響きにも思える。
「うん? 何だお前ら」
「いや、試験参加者でしょ普通に」
問い返すノーダンに向けてババロアが突っ込んだ。するとケッタソイが前に出て声を上げる。
「お前らまさか俺たちに挑もうというのか?」
「あぁ。俺たち栄光の軌跡が相手するにはお前らぐらいじゃないと釣り合わねぇからな。その素材俺たちがもらっていくぞ」
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