第160話 素材集めの為には
「とにかく素材を手に入れないと始まらないよね」
「うん。リストを先ず確認しないとね」
「スピィ~」
僕たちはビスクから受け取ったリストを確認した。リストには必要な素材と素材持ちの魔物の名前が記されていた。
どうやら素材にはランクがあるようだ。このランクはこの試験独自のランクとも記されている。
またこの試験、手に入れた素材を収納する上で魔導具などに頼るのは禁止されている。つまり持ちきれなくなったら一度戻って試験官に引き渡す必要があるということだ。
気になるのはSと記された素材でそこにはおすすめしないと言う表記がある。更に明らかに筆跡の違う文字で何かワンポイントみたいなことが書かれていたよ。
「えっとS素材持ちの魔獣はCランク冒険者が重点的に狩っている。狙うなら冒険者からかすめ取るのがおすすめだって。何か凄いこと書かれてるよね」
エクレアが苦笑気味に言っていた。確かにこれはね。まともに狩れないならすでに手に入れた冒険者から奪おうってことだもんね。
でもこれで一つ疑問が解消された。いくら試験とはいえ、僕たちより格上の冒険者が何で先に森にいるのかとちょっと謎だったんだよね。
だけどリストのSと記されている魔獣を狩るために先に入っていたんだ。
つまり、大物を優先して行くなら僕らはそれを狙うしかないというわけだ。
「とりあえず作戦を立てないとね。方法としては無理してSとついた素材は狙わず堅実に他の素材を狙って地道に稼ぐか……それともS素材を狙って一発逆転を狙うか」
「そうだね。ただどっちにしても早くしないと他の冒険者に取られてしまうよね。それに素材を得たとしてもこの試験は横取りもありだから本当油断できないよ」
「スピィ……」
僕の話を聞いたエクレアが真剣にリストとにらめっこしながら考えを述べた。確かにそのとおりだよ。
リストにはどれだけ素材を集めたら合格ラインかも記されているけど、それを見る限りS素材を手に入れさえすればそれだけでも大分有利だ。S素材だけで合格ラインの三分の二程度は達成出来るからね。
逆にこのリストで一番下なのだDなのだけどこれだとかなりの数を狩る必要が有る。素材を魔導具などで収納できないということは当然僕たちだってスイムに頼ることは出来ない。
そうなるとD素材だとそれだけ多く往復しないといけないから不利となる。そうなると……
「先ずはBとAの素材から狙おうか。魔物もウェアウルフとかだし僕たちでも十分対処出来ると思う」
「うん。私もそれがいいかなと思った。後はSは様子を見てかな」
「スピィ~」
こうして僕たちの作戦は決まった。さぁそうと決まれば魔物を探さないと――
◇◆◇
「……何で横取りが自由なんてルールを加えたんですか? S素材にしても従来ならCランク冒険者と協力してが前提だったはずですが」
「それじゃあ、つまらないだろう?」
ビスクの質問にシルバがあっけらかんと答えた。ビスタが呆れている。
Cランク試験の内容については試験官に裁量権がある。試験官によって毎年試験内容が変わるのもこういったルールがあるからだ。
これは毎年同じ試験にしてしまうと事前の対応が容易になってしまい試験の意味がないという管理局の判断によるものでもある。
「それにしたって横取り可なんてまるで盗賊じゃないですか」
「ま、冒険者だって多少似通った部分もあるんじゃないか?」
「とんでもないことを言いますね」
ビスクの頬が引くつく。
「冒険者ってもんは綺麗事だけじゃやってられないもんだ。特に上に行けば行くほどな。そのことをいい機会だから学んでほしいって親心みたいなもんだ」
「……そんなものでしょうか」
「そんなもんさ。それに結局お前より俺のルールが採用されたんだからな。ま、そういうことだろう」
そう言って笑うシルバに不満げなビスクであり、これ以上トラブルが起きないことを祈るばかりなのであった――
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