【WEB版】水魔法なんて使えないと追放されたけど、水が万能だと気がつき水の賢者と呼ばれるまでに成長しました～今更水不足と泣きついても簡単には譲れません～

第157話 凍す！

「確かに僕の名前はネロだけど、君はえっとアイさんでいいのかな？」

「アイの名前はアイス。気安く呼ぶな凍（こご）すぞ！」

　えぇ！　何か急に目つきを鋭くして威嚇してきたよ！　そんなに悪いこと言った僕!?　というかアイスでアイならほぼほぼ合ってないかな！

　いやそんなどうでもいいことに突っ込み入れてる場合じゃないよ！ 何でこの子いきなり喧嘩腰になってるのさ!?

「お前がネロ。ネロは――敵！」

　わわ！　今、氷の塊を飛ばして来たよこの子！ しかもかなりの大きさだ！ 当たったら間違いなくただじゃすまない大きさだね！ 咄嗟に後ろに飛んでかわしたけど危なかったよ！

「……外した。チッ」

　あぅ、凄い顔で舌打ちされたんだけど……これは本格的に怒ってない？ そんなにアイと呼ばれたのが嫌だったのかな……。

「コラッ！　貴方ネロに何してるのよ！」

「スピィ！」

　僕たちのやり取りを見ていたのかエクレアがアイスという少女に文句を言った。よく考えたら近くに皆がいる状態だしすぐにわかるよね。スイムも僕の肩の上でぷんすかしてるし。

「……お前は誰だ」

「私はネロの仲間のエクレアよ。それよりいきなり攻撃しちゃ駄目じゃない。危ないでしょう」

「本当、貴方何考えてるのよ」

「ネロ。怪我はありませんか？」

「あ、うん。大丈夫だよ」

　エクレアとフィアがアイスを囲むようにして文句を言っていた。セレナは僕に怪我がないか気にしてくれている。そしてガイは、何かアイスを睨んで反応を見てるね。

「わかった？　駄目だよもうこんなことしちゃ」

「でもネロは……」

「でもじゃないわよ。大体試験だからといっても喧嘩じゃないんだから。いきなり攻撃魔法を撃つなんて下手したら失格よ！」

「……失格は困る」

　何かフィアとエクレアに叱咤されてシュンっとしてる。ちょっと可哀想になってきたよ。見た目には青髪であどけなさの残る可愛らしい女の子なんだよね。

「……おいテメェ」

「はいストップ。ガイが出るとややこしくなるんだから駄目」

「いや、そうじゃなくて確かめたいこと」

「だ～め」

　ガイが何か言いたげに前に出たけどセレナに止められちゃってるよ。人差し指を口元に当てられて本当に黙っちゃった。

「……ごめんなさい。とりあえずアイ、気をつける」

「とりあえずというのは気になるけど謝れたのは偉いわね」

「うん。いい子いい子」

「スピィ～♪」

　そうこうしている間にアイスも頭を下げて謝っていたよ。あれ？　意外と素直？　何かエクレアに頭を撫でられて照れくさそうにしてるね。

「……迷惑かけたこれお詫び」

　するとアイスが凍った果物をエクレアとフィアにあげていたよ。さっき彼女が食べていたものだね。

「くれるの？　ありがとう」

「へぇ～果物って冷たくしても美味しいんだね」

　どうやらあの凍った果物は美味しいらしいね。どんな味なのかな？

「スピィ～……」

　するとスイムが物欲しそうに見て鳴き声を発していた。スイムは果物が好きだから食べてみたいのかもね。ちょっとお願いしてみようかな？

「……そこのスライム食べるか？」

「！　スピィ～！」

とおもっていたらアイスからスイムに声を掛けてくれたよ。スイムが嬉しそうピョンピョン跳ねてアイスに近づいていった。

　根はいい子なんだろうな～。

「スピィ～♪」

　スイムが凍ったリンゴを受け取って戻ってきたよ。僕の肩の上で美味しそうに食べているね。

「あの、りんごありがとうね。スイムの大好物なんだ」

「……そのスライム、スイム言うのか」

「うん。宜しくね」

「スピッ！」

　スイムも宜しく～と言ってるようだよ。果物のこともあってアイスに好意的だね。

「スイム……美味しいならよかった。でもネロ、お前にはやらない。お前は敵。今は凍さない、けど、いつか凍す！」

　えぇ！　すっかり打ち解けたかと思えば、僕に対してだけはやっぱり辛辣だったよ！　というかそもそも凍すって何？

「おいネロ。今の女には気をつけろ」

　するとガイが僕になんだか忠告してきたよ。そう言えば何か話しかけようとしていたし、ガイはアイスのことで気になることがあるのかな？

「ガイはあの子のこと知ってるの？」

「……直接知ってるわけじゃねぇよ。ただ――」

「やぁやぁ、これはまた随分と綺麗な女の子たちが揃ったじゃないか。わかった全員僕の愛人にしてあげるからこれからの事はすべてこの僕、カートス伯爵家期待の星ロイド・カートスに任せ給え」

　僕がガイと話していると聞き覚えのある男の声が耳に届いた。あぁそういえばすっかり忘れてたよ。試験が始まったわけだから当然この貴族も来てるわけだよね――