第156話 仮面の冒険者
「えっと、全員仮面――」
「スピィ……」
声が聞こえたので見るとエクレアが目を白黒させていた。全員が仮面姿。しかもそれぞれ別々の片側だけの仮面だ。
エクレアがそんな顔になるのも仕方ないかも。スイムもちょっと戸惑ってるようだし。
「あはは。驚かせちゃったかな? ボクたちは【仮面人格】というパーティーを組んでいてね。ボクはリーダーのライト・マスクなのさ。宜しくね」
顔の右側に仮面をつけたライトがそう挨拶してくれた。仮面人格か……名前からして変わっているなぁ。
そういえば彼の仮面は白くて笑顔に見えるね。ライトも明るそうだし仮面と人格がぴったりな印象はあるよ。
彼は白銀の鎧を着ていて腰には剣、左手には円盾だ。仮面はともかく正統派の剣士といった印象だね。
「はぁ……ネロっては相変わらず奇妙な縁が出来るわね」
フィアも近くまでやってきて呆れたように呟いた。う~ん奇妙なかはともかく確かに最近は色んな人と知り合いになってる気がする。
「で? いかにも怪しい仮面連中が俺たちに一体何のようだ?」
ガイも会話に参加してきた。仮面人格の四人を睨みつけていて明らかに警戒しているよ。
「ガイ……その誰でも彼でも噛みつく癖、やめたほうがいいですよ」
「うるせぇよ! 人を野良犬みたいに言うんじゃねぇ!」
ため息交じりに注意するセレナにガイが言い返していた。誰も野良犬とまでは言ってない気はするけどね。
「やれやれ。わしらこれでも結構地元じゃ名がしれとるつもりなんだがのう」
すると顔の上半分だけを青い仮面で覆った男性が会話に加わってきた。仮面には細長い羽のような細工も施されている。
仮面の色に合わせたような蒼くて長い髪が印象的だね。長身痩躯といった体格で話し方が何とも古風だ。
「全然知らねぇよ。大体地元がどこかもしらねぇ」
「う~ん。わしらもまだまだじゃのう」
「仕方ないだろうスカイ。大体地元でも俺たちはそこまで派手な活躍はしてないだろうが」
「あはは。確かにねアビス」
ライトにアビスと呼ばれていたのは顔の下半分に紫色の仮面をつけた男性だ。角が出たような仮面で後のあたりに赤い宝石がはめ込まれている。
紫色の癖のある髪で褐色肌。筋骨隆々の逞しい男性だ。パワーで圧倒しそうな雰囲気が感じられる。
「――でも、私たちは貴方を知ってる……勇者の紋章を持った勇者ガイ、だよね?」
最後に声を発したのは仮面人格の紅一点。顔の左半分に黒い仮面をつけた女性だ。仮面は細くカーブしたような形状でなんとなくだけど月を彷彿させる。
黒髪は地面に付きそうなほど長く、見た感じは細身で華奢なか弱い女性というイメージだ。そして声がとても小さいね……。
う~ん。彼女はガイのことを知ってるようだね。流石は勇者パーティーといったところかな。
「――フンッ。よくわからねぇ連中に覚えられていても嬉しかねぇよ」
「はぁ本当こいつは……」
相変わらずガイは素直じゃないね。聞いていたフィアが呆れているよ。
「ちなみに青い仮面の彼がスカイ・ウィザード。こっちの宝石のついた仮面をした逞しい彼がアビス・ヘルム。そしてうちの紅一点のこの子がシャドウ・フェイスだよ。宜しくね」
ライトがにこやかに仲間たちのことを紹介してくれたよ。
「ケッ。お前らの名前なんてどうでもいい」
「もうそんなこと言わないの。折角なので私は【栄光の軌跡】のセレナでこの子が――」
「フィアよ。正直最初は、また怪しいのがネロに近づいてきてるわね、と警戒したけど礼儀正しくて安心したわ」
「えっと僕はネロでこの子は友だちのスイム」
「スピィ~♪」
「私はエクレアだよ。宜しくね!」
仮面人格のメンバーに僕たちも挨拶を返した。ガイは相変わらずで自己紹介もしたりしないけど、ガイのことは仮面人格も元から知ってたみたいだからね。
「見ての通りボクたちは仮面をしているせいか、わりと警戒されやすいんだ。良かったら仲良くしてほしいかな」
「えっと、はい僕たちでよければ……」
「ざけんな! ネロ! てめぇも言われるがままほいほい尻尾振ってんじゃねぇよ! 試験で仲良しこよしなんてしてられっか!」
何かガイに怒られてしまった。そんなに怒らなくても……それに試験と言っても場合によっては協力し合うこともあるかもだしね。
「はは、手厳しいね。お手柔らかに頼むよ。それじゃあ――」
そして仮面人格の四人は僕たちから離れた場所に移動した。これから試験だし作戦でも立てるのかもしれないね。見てると結構パーティーで話し合ってる様子もみられるし。
――シャリシャリ。
仮面人格の四人が立ち去った直後、何かを削ってるようなそんな音が耳に聞こえた。なんだろう? と思って音のする方を見てみると小柄な女の子がりんごを口にしながらこっちを見ていた。
「えっと……」
「――お前、ネロと呼ばれてた。ネロか?」
何か女の子からりんごを片手に質問されたよ。今シャリシャリいってたのはりんごを齧っていたからみたいだね。
でもこの子が手に持ってるりんご妙にヒンヤリしている気がするし白っぽい。これってもしかして凍ってる?
「……
アイ? えっと、それがこの子の名前なのかな――?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます