第153話 負けられないガイとネロ
「あぁそれと。お前らは負けたら失格な。その代わりに二人合格にするってわけだ」
「えぇええぇえ!」
「スピィ!?」
なんだかますますとんでもない話になっちゃったよ。ただでさえ無茶振りなのに負けたら失格だなんて。
「丁度いい。こっちも腕がなまりそうだったからな。何なら俺一人で纏めて相手してやってもいいんだぜ。ネロは後ろで黙ってろ」
そう言ってガイが腕をグルングルン回した。敢えてかわからないけど相手の冒険者にしっかり聞こえるぐらいの声でハッキリと言い放ったからね。
当然冒険者の機嫌も相当悪い。うぅ、この感じだとガイはこの戦いに異論はないんだろうね。
「し、仕方ない。僕も覚悟を決めるよ」
いくらガイが下がってろといったからって、黙ってみているわけにはいかないからね。
「ははっ。そうそうそうこなくちゃな。もっともこの状況で一番大変なのは一人かもだがな」
「え?」
試験官のシルバがそんなことを言った。どういう意味かなと思っていたその時――
「ネロぼーっとしてんな!」
ガイが叫んだ。そして僕に向けて放たれた一本の矢。
「水魔法・水守ノ盾!」
魔法で水を盾にし矢を防いだ。ふぅまさかいきなり僕を狙ってくるなんて、と思っていたら今度は火球が飛んできた!?
「ちょ、何で僕ばかり!」
「水の紋章持ちなんて使えない雑魚野郎楽勝だぜ!」
はッ! そうか僕の紋章が水だから真っ先に狙われてるんだ。
ここのところは僕の紋章について悪く言う人も少なくなってたからうっかりしていたよ。
でも前まで僕の水の紋章は蔑みの対象だった。当然彼らのCランクに上がろうと必至だ。それなら一番下と見てる僕を狙ってくるのは当然なのかもしれない。
「君。大丈夫?」
その時、僕の横にとんがり帽子を被った女のが子が駆け寄ってきた。結構可愛らしい女の子だな。
「私、こんなの納得いかないよ! 水の紋章だからって皆して、だから守ってあげるね♪」
「え? あ、ありがとう」
「うん! じゃあ援護するから前お願いね」
「は、はい!」
女の子に言われて僕は前に出た。あれ? でもこれって――
「火魔法・炎の吐息!」
「おっと!」
後ろから吹き出された火炎を咄嗟に避けた。何かおかしいと思ったら!
「あぁ! 何で避けるのよ!」
「避けるよ!」
何か文句言われたし。理不尽!
「ネロ。お前デレデレしてんじゃねぇぞ。情けねぇ」
「いや、デレデレなんてしてないよ!」
「いや、してたわよねネロ。本当情けない!」
「え!?」
「もうネロっては女の子に甘いんだから!」
「えぇ!」
何故かフィアとエクレアにも非難されてしまったよ!
「てめぇらネロばっか狙ってんじゃねぇぞ――勇魔法・大地剣!」
「「「「ぐわぁああぁあああ!」」」」
ガイの魔法で地面が剣に変わって突き上げた。その一撃でパーティーが一つ完全にやられたよ。
「僕も負けてられないね。水魔法・噴水!」
「「「「うわぁあああぁああ!」」」」
水が勢いよく噴出しパーティーが一つ舞い上がった。
「キャァアアアァアアアア!」
その中にはさっきの女の子も入ってた。ちょっと心苦しいけど僕もここで落ちるわけにはいかないからごめんね!
「何だ。俺に向かってくるのは一人もいねぇのかよ」
シルバが退屈そうにしているよ。髪の毛を掻くと腕に装着された腕輪がキラリと光った。
その時だ、シルバの後ろから迫る影。
「貰った!」
「武芸・銀操作――」
するとシルバが技を披露。腕輪が飴細工のように変化し盾となって背後からの攻撃を防いだ。
「そんなッ!?」
「俺を狙ったことだけは褒めてやるが、その腕じゃ届かねぇよ」
シルバはもう片方の腕に装着していた腕輪も変化させ棒状にして掛かってきた相手を殴りつけた。
その一撃で男は地面に叩きつけられそのまま気を失ったようだったよ。
それにしても今の流れるような動き、流石は試験官だけあるよね――
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