第152話 納得がいかない冒険者たち

「そんな、全員集まってるのに何で不合格なんだよ!」

「そうだ! どうして俺らだけ!」

「納得いかないわ!」


 厳しい判定だなと思ったけど、不合格を言い渡された冒険者は納得いっていないようだった。


 試験官と思われる二人に食い下がる。


「たく見苦しい奴らだな。試験官が不合格だってんだから諦めろってんだ」

「ちょ、ガイそういうことは思ってても言わないの」


 不満そうな冒険者たちの様子を見ながらガイが厳しく言い放った。その様子を見てフィアが注意していたよ。


「てめぇ! 聞こえたぞ! お前おれらのこと馬鹿にしただろう!」


 不合格を言い渡された冒険者の一人がガイを指さして文句を言ってきた。フィアが言わんこっちゃない、といった顔で頭を抱えている。


「あぁ言ったさ。言って何が悪いんだよ。うざってんだよ! お前らは負けたんだよ。だからCランクになれねぇしそれが結果だ。それなのにピーチクパーチクわめきやがって鬱陶しい」

「なんだとテメェ!」


 ガイがまた余計なことを言っちゃったよ。どうしてこんな相手の気持ちを逆撫でるようなことを――


「あ、あはは。ごめんなさいガイはちょっと気が立ってるみたいで。悪気はないんです」


 このままじゃまずいなと思ってカバーに入った。あまり揉めても試験官からの心証悪そうだし。


「お前は関係ないだろうが! 引っ込んでろ!」

「いや、だからどうしてそんな喧嘩腰なのさ。折角こうやって昇格試験に挑ませて貰ってるんだし、ね?」


 やたらガイがイライラしてるんだよなぁ。とにかく落ち着かせないと。


「たく、てめぇら何勝手に場外乱闘やってんだ。仕方ねぇな。おいビスクさっさと他の連中にも言ってやれ」

「は? いや、この状況で言うんですか?」

「そうだよさっさとしろ」


 ビスクと呼ばれた女性の試験官が何か戸惑っているけど、もう一人の銀髪の試験官が彼女を促した。


 ビスクは一度額を押さえた後、冒険者を見回して口を開く。


「そこで揉めてる冒険者もちょっと黙っててください。ここでもう一つ発表があります。冒険者パーティー【白雲の流れ】、【四色蓮華】あとは冒険者のロンリーと、今呼んだ方々は全員不合格ですのでここでお引取りください」

「「「「「「「「「「はぁあああぁああああ!?」」」」」」」」」」


 名前を呼ばれたパーティーと冒険者の声が揃った。


 当然だけど、今呼ばれた冒険者は別に遅れて来たわけじゃない。僕たちより先に着いていた人だっている。


「ちょっとまってください! どうして俺たちが不合格なんですか!」


 不合格と言われたパーティーの一人が不服を口にした。どうみても集合場所には間に合っているわけで納得がいってなさそうだよ。


「お前ら途中で悲鳴が聞こえても無視しただろう?」


 銀髪の試験官が今不合格とされた冒険者たちに向けて語りかけた。


 悲鳴、僕の時もあったけどあれは試験の一環だったんだよね。


 つまり他の冒険者も似たようなことをされたってことか。


「え? ま、まさかそれで?」

「そのとおりです。もうご存じの方も多いと思いますが、あれも合否を決める仕掛けの一つなんですよ」


 ビスクが答えた。


「ちょっと待てよふざけんな! こいつらはパーティーで見捨てたからまだわかるが俺はソロで参加してんだぞ! あんなもんかまってたら間に合うわけねぇだろうが!」


 ロンリーという冒険者が文句を言った。ソロ、つまり一人だったわけで確かにそれであの状況は厳しい選択を迫られていると言えるかな。


 僕だったらソロでも助けに向かっちゃいそうだけどね……やっぱり放ってはおけないし。


「例え貴方が一人だとしてもこの試験は冒険者としての資質も見てるんです。様子も見に行かず無視はCランクを目指してる者としてはありえません。それに例えソロでもきっちり観察していれば対処する方法はあります。そのようにしてますからね。実際他にもソロの冒険者はいますが不合格ではありませんよ」

「ぐっ!」


 ロンリーが喉を詰まらせた。たしかにソロが彼だけとは限らないわけで、でも不合格を言い渡されたのは彼だけだった。つまりそういうことなんだろうね。


「ちなみに遅れた奴らは、悲鳴を聞いてしっかり助けには言ったようだがその後が悪かったのさ。大した策も練らず行きあたりばったりな方法でグダるだけだったからな。それで遅れたから不合格ってわけだ」

  

 銀髪の試験官が付け加えるように言った。不合格にはそんな理由もあったんだね。


「くっ、こんなの納得できるかよ! お前らのさじ加減次第じゃねぇか!」

「そ、そうよこんなの不公平だわ!」

「試験のやり直しを要求する!」

「は? 何いってんだこいつら。頭湧いてんのか」

「ちょ、ガイ、だからそういうこと言ったら駄目だってば~」

「スピィ~」

 

 ガイがまた暴言を……スイムも宥めようと思ってかピョンピョン跳ねながら鳴き声をあげているよ、


「そうかそうかそんなに納得出来ねぇか。まぁそうだよなお前らにだって不満はあるよな」

「え? ちょ何言ってるんですかシルバ」


 ビスクがぎょっとした顔で銀髪の試験官を見ていた。シルバというのがあの試験官の名前みたいだね。


「よっしゃ! だったら――」


 するとシルバがこっちに向かって歩いてきて――何故かガイと僕の腕を取った。


「お前らそこまで言うならチャンスをくれてやんよ。俺かこの二人、まぁ誰でもいいが倒せた奴を合格にしてやるよ」

「え? えぇええええぇえええ!」

「スピィ~!?」


 なにこれどういうことなの? 一体何でこんな話に!?

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