第143話 ガイとの合流そして――
「ガイ。戻ってたんだね」
「スピィ~」
「おかえりなさいガイ」
「それにしてもよくここがわかったわね」
戻ってきたガイに僕たちが声を掛けた。スイムもガイを見てピョンピョン飛び跳ねている。
セイラは優しく微笑みかけていたね。そしてフィアの言葉。ガイとはウォルトの町で分かれたからそう聞いたんだろうね。
「あっちの冒険者ギルドに立ち寄って聞いたんだよ。それでネロ、フルールから言伝だ。ウォルトに戻ったらとにかく顔を出してくれってよ」
どうやらガイがここまで来たのはフルールからの伝言を伝える為でもあったようだね。勿論戻ったら顔を出す予定ではあったけど。
「う~ん。わざわざ伝言を頼むなんてなんだろう?」
「何かうっかりして渡し忘れていた物があるって言ってたぞ。全くあの受付嬢も抜けてるところあるよな」
ガイが呆れたようにそんなことを言っていた。僕の中ではしっかりもののイメージだけどね。
ただ、あの時は黒の紋章持ちのこともあってゴタゴタしていたからそれでうっかりしていたのかもね。だけど忘れたものってなんだろう?
「あ、そういえば――」
エクレアがハッとしたような顔で呟いた。何かを思い出したようだよ。
「確かダンジョンで見つけたスキルジュエルがあったよね。そのことかも?」
「あ、そうか!」
エクレアから聞いて僕も思い出した。言われてみれば確かに鑑定をお願いしていたね。時間が必要と言われていた上あの騒ぎがあったから僕もうっかりしていたよ。
「そのままこっちに来ていたからね。僕も失念していたなぁ」
「そうか。ま、でも良かったかもなノーランドに来ていて」
僕の反応を見てそう口にしたガイの表情に影がさしていた。
「ガイ、それってどういう意味?」
フィアもガイの様子が気になったのか問いかけたね。
「あぁ~まぁ戻ればわかることだけどな。例の連中が暴れまわっていた時、冒険者も操られていたとは言え町で暴れただろう。そのせいか一部の住人からの目が厳しくなっていてな」
頭を描きながらガイが答えた。確かにそうだった。そしてこの話を心苦しそうに聞いていたのはエクレアだった。
ギルドマスターでもあるエクレアの父親も黒の紋章使いの力に呑まれて暴れてしまっていた。それがわかっているからエクレアも辛いのかもしれない。
「エクレアそんな顔しないで。すぐには難しいかもしれないけどその分僕たち冒険者がこれまで以上に働けばきっと皆わかってくれるよ」
「そうですよ。それに神は正義の行いを見てくれているものです」
「セレナのそういうところが聖職者って感じよね。でも、私もそう思う。だからこそ私たちも試験を突破して昇給! それから更に活躍しないとね!」
フィアが元気づけるように言ってくれた。フィアの明るい振る舞いでエクレアも笑顔を取り戻していたよ。
「ま、フィアの言う通り俺らもCランク試験に向けて本格的に動かねぇとな。というわけでネロ馴れ合いはここまでだ」
ガイがそう言って強気な視線を僕に向けてきた。何か勝負でも挑まれてそうな感じだけど。
「えっと、試験は別に戦いじゃないし場合によっては協力することもあるかもだしお手柔らかにね」
僕の発言でガイがずっこけていた。
「全く緊張感の欠片もねぇ。ネロ言っておくが試験はそんなに甘いもんじゃねぇぞ」
「て、ガイこそどうしてそんなことわかるのよ?」
「俺だって多少は調べたりしてるってことだよ。ただでさえ試験はその時の試験官によって内容が大きく異なるって話だからな」
ガイがそう教えてくれた。正直これまではまさか僕がDランク試験に挑めるなんて思ってなかったから試験に関してはそこまでチェックしてなかった。
だけどせっかくこうしてギルドマスターが試験に挑む機会をくれたんだしね。不甲斐ない結果だけは残さないようにしたいよ。
ただ、甘いかもだけどやっぱりガイも含めて全員がCランクに昇格できたらそれが一番だと思っちゃうんだけどね。
「そういうわけだからな。行くぞセレナ、フィア」
「――やっぱりそうなるよね。うん! それじゃあネロ、エクレアお互い試験頑張ろうね!」
「お二人に神の思し召しがあらんことを――」
そしてフィアとセレナはワンとセンツにもお礼を伝えて店を後にした。そのままノーランドからも出ていくのだろうね。
「それでは僕たちも行きます」
「おう。坊主親友は大事にしろよ。そして新しい装備で水属性を馬鹿にした連中を見返してこい」
「はい!」
「うふふ。あなた達ならきっと大丈夫よ」
「がんばってくださいね!」
そして僕たちはワンやセンツ、ロットに見送られてワンの店を後にした。
「ノーランドいい町だったよね」
「うん。また来たいね」
「スピィ~♪」
そして僕たちは色々とお世話になったノーランドを出てウォルトの町に戻ることにしたんだ。
試験ももう少しだしこれから一体どんな試練が待ってるんだろうね――
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