第134話 ワンとガラン工房の親方
「ワンさんガラン工房の事をご存知なんですか?」
なんとなく気になって聞いてみたよ。勿論同じ町だし工房自体はしっているとは思うけど、今の反応はただ知ってるというだけのものじゃなさそうだしね。
「知ってるも何もガラン工房で親方やってるドルクなんざこんな小さな洟垂れ小僧の頃から知ってるってもんよ」
ワンは手でドルクの昔の背丈を表現しつつ教えてくれた。どうやら随分と親しそうではあるね。
「でも、私、その親方さんにも会えずじまいで……」
「そうそう門前払いされて感じ悪かったのよ」
しょんぼりした顔でエクレアが答えフィアは思い出したように眉を吊り上げ文句を言っていた。
「でも工房はとても素晴らしかったんですよ! 親方の心意気を感じ取れました!」
セレナが興奮気味に訴えた。そういえば職人の工房が好きだったんだよねセレナ。
「まぁ奴の仕事が確かなのは俺も認めるところだ。この町で武器や防具を作りたいならドルクのところにいけば間違いないだろうぜ」
「でも、紹介がないとダメって話だったし……」
セレナの話を聞いたワンが答えるとエクレアが残念そうに答えた。門前払いされたのもそれが原因ではあったんだよね。
「あいつのとこも似たようなもんだからな。有名になったはいいがガランの工房で作った装備を持ってさえいれば腕が伴ってなくても箔がつくなんて勘違いした連中も多くなってうんざりしていたんだろう。まぁあいつはそれを紹介制にして対応したようだがな」
そうだったんだ。ワンも似たようなことがあって杖を作らなくなったから気持ちを理解しているのかもしれない。
「――ちょっと待ってろ」
するとワンが席を外し裏に引っ込んだ。なんだろう? と思っていたら暫くして戻ってきたのだけど。
「ほら。この手紙をもってけ。少なくともこれで話ぐらい聞いてくれるはずだ」
そう言ってワンがエクレアに手紙を押し付けた。
そうか昔から知ってるワンの手紙なら紹介状として見てもらえるものね。
「あ、ありがとう! ワンさんネロの信じていた通りの人だったね」
エクレアがワンにお礼を伝え僕に向かって嬉しそうに言ってくれた。
「良かったねエクレア」
「なら後で皆で言ってみようか」
これでエクレアも装備を整えられそうだよ。そしてフィアは再び工房に行こうと持ちかけたのだけど。
「あんまりぞろぞろ押しかけるな。装備品が必要なのは嬢ちゃんだけなんだろう? 関係ないやつが来るのをあいつは嫌うからな」
ワンがガラン工房について教えてくれた。どうやら気難しい人みたいだね。
「それなら僕たちはやめておいた方がいいかもね」
「そうですね。工房には私とエクレアだけで行くとしましょう」
「え?」
僕が遠慮を示すもセレナは一緒に行く気満々みたいだ。フィアがちょっと驚いている。
「いやセレナも関係ないじゃない」
「何を言うんですか! あんな素晴らしい工房をしっかり目にできるチャンスなんですよ! それに私はガラン工房と働く職人たちにとても興味があります。これはもう部外者とは言えないと思えませんか!」
「そ、そうか?」
「そうですよね!」
「お、おう。まぁ、そうかもな」
セレナの熱意にワンも折れたよ! 凄いよセレナ。ワンを何も言えなくさせるなんて。
「えっと、じゃあ早速ガラン工房に行ってみるね」
「うん。僕はこれから作成する杖についてワンさんと話してるよ」
エクレアは手紙を持ってガラン工房にセレナと向かうようだ。僕は引き続きここに残って杖について詰めていく。
「私も待ってるけど、セレナ戻ったら付き合ってもらってもいいかな?」
「バクボアだよね。勿論仲間なんだし」
「スピィ~♪」
フィアも一緒に杖について聞くみたいだ。自分でも杖をお願いすることになるようだし参考に聞いておきたいのかもね。
セレナが戻ってからは素材獲得のために狩りに行くみたいだけどね。スイムはフィアに抱えられて撫でられている。とても心地よさそうだよ。
「じゃあちょっと行ってくるね」
「うふふ。楽しみです」
「いってらっしゃ~い」
こうしてエクレアとセレナはガラン工房に向かった。セレナも無事良い装備品作ってもらえるといいんだけどね――
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