第132話 ロイドとの賭け
「言ったわね。私はしっかりこの耳で聞いたからね!」
フィアがロイドに指を突きつけ言い放った。もう言い逃れは出来ない、と言い聞かすようにだよ。
「勿論さ。その変わり君たちもその男が負けたら気兼ねなしにこっちに来ていいからね」
自信たっぷりにロイドが言った。
「まだそんなことを……」
「スピィ……」
「おい。俺との約束はあくまで店の件だけだぞ」
思わず言葉が漏れる。スイムも困った様子だ。そしてワンも念を押すようにロイドに言った。
ワンの店を守るためにも負けられないと思っているけど今の話と皆のことは別問題だからね。
「――そうね。流石にそのままパーティーに加わる約束は出来ないけど、ネロが負けたらあんたとデートぐらいしてあげてもいいわよ」
そんな中、フィアがロイドに向けてとんでもないことを言い出したよ!
「ちょ、フィアそんな約束!」
「いいのよ。ただしネロが勝ったらもう二度とネロの事は馬鹿にしないで! 謝罪もちゃんとして!」
フィアの発言には驚きだけど、その代わりに交換条件を出していた。それがあったからこんなことを言ったのか。
しかも僕に関わることだしなんだか申し訳ない。
「そういうことね。それなら私も乗る! フィアだけに負担掛けさせるわけにはいかないもの」
「ちょエクレアまで皆に悪いよ」
やっぱりこんなの良くないよ。そう思って二人を止めたけど――
「無粋な真似はやめたまえ。君は二人の気持ちがわからないのかい? こうでもしないと二人は君から離れられないし放っておけないと思っているんだ。全く健気なことだよ。それに引き換えお前は最低だな」
ロイドが割って入ってきて知ったふうな口を聞いた。その考えは絶対間違ってるというのに。
「とにかく言質はとったのさ。僕は三人の為にも負けられなくなったよ。フフッ、そうとわかれば色々準備しないとね。アディオス僕のヒロインたち!」
こうしてロイドが勝手に納得して勝手に出ていった。嵐のような男だった。嫌な意味でだけど。
「うぅ、結局妙な賭けに乗ることに……」
本当頭を抱えたくなるよ。どうしてこうなったのか。
「私は信じてるよ。ネロは絶対Cランクに合格出来るって」
「フィア。ネロのことばかり言ってますが私たちだって試験に挑戦するのですからね」
フィアが僕に期待してくれてるようなことを言ってくれた。だけど、セレナの言うようにフィアやセレナ、それにガイも試験に参加するんだよね。
勿論僕とパーティーを組んでいるエクレアもね。
「それは私もだけど……よく考えたらあのロイドも私たちも合格したら決着どうするつもりなのかな?」
「スピィ?」
「「あ……」」
エクレアが疑問を呈したことで僕とフィアの声が揃った。言われてみれば全員合格したら勝敗も決まらないね。
「あいつそのこと考えてなかったのかしら?」
「フンッ。どうせあの野郎は小僧が受かるわけ無いと舐めて掛かってんだろう。だからどっちも合格した場合なんてはなから想定してないのさ」
ワンが呆れたようなそれでいて決意めいた顔でそう言った。色々思うところがあるのかもしれない。
「こうなったら小僧。さっさと杖と素材を寄越せ。小僧の力を引き出せる最高傑作にしてやる」
「は、はいわかりました!」
よかったワンがやる気になってくれた。本来の目的は杖を作ってもらう事だったけどロイドのおかげで皮肉ではあるけどワンが更にやる気を見せてくれたんだ。
「あ、そうだ! 素材についてですが実は他にも――」
僕はケツアルカトルがくれた素材も合わせてワンに見せることにした。
それらの素材を見たワンが目を剥いて驚いていたのだけどね――
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