第130話 Cランク試験参加者
どうやらロイドも僕たちと同じで次のCランク試験に参加するらしい。
それにしてもまさか一ヶ月程度で試験だなんて……僕は勿論ガイだって一年以上掛かってる。
正直それでも話によると早い方らしいんだけどね。Dランクに行くだけでも良くて四~五年と言われるほどなわけだし。
「ま、つまりだ。君は参加するだけ無駄だから諦めたまえってことだよ」
「はい? えっと、言ってる意味がわからないのだけど……」
「スピィ……」
素で聞き返してしまった。ロイドたち兄弟が参加しようが僕たちには何も関係がない。
スイムもなんとも言えない様子で細い鳴き声を上げていた。
「わからないかい? 僕たち兄弟が参加する以上、試験全体のレベルが上がる事は必死だ。こういうのは参加者のレベルに応じて合格ラインも変わってくるものだからね。だから君は落ちる。これは決定事項だ」
「えぇ……」
すごく自意識過剰な発言だと思う。しかも言ったとおりになると信じて疑っていない様子で僕は開いた口が塞がらない。
「いい加減にしなさい。何を勝手なこと言ってるのよ!」
「そうよ。それにネロの実力は本物よ。パーティーを組んでから近くで見てきたんだから」
フィアがキレ気味に声を上げ、エクレアも僕を擁護してくれた。エクレアとはまだパーティーを組んで間もないけどそれなのにここまで信頼してくれるのは正直にいって嬉しい。
「どうやら君たちは本物の魔法を知らないようだね。残念ながら水の紋章使いなんて魔法士としては出来損ないだ。使い物にならないよ」
大げさに肩を上下させロイドがわかったような事を言った。僕の魔法なんて一切見てもいないのに水の紋章だからと決めてかかってるんだ。
「そんなのと試験に挑んだところで無駄に恥をかくだけさ。僕と組み給え本物の魔法というのを教えてあげるよ」
手を差し出し僕がいる目の前で三人をパーティーに誘い出した。さもそれが当然だと言わんばかりの態度にはある意味感心する。
「いい加減にしてください。私は勿論フィアもエクレアだって貴方とは組みませんよ。それに勘違いしているようですがそもそも私とフィアはネロやエクレアとは別パーティーです」
うん。まさにその通りで今は一時的に一緒に行動しているけど試験ではガイと一緒に挑むはずだからね。
「そうかい。でも問題ないよそのパーティーから脱退して僕の下へくるといい。勿論今なら側室の椅子も用意してあげられるよ」
セレナの話など意に介す様子もなくまたとんでもないことをいい出した。
側室って……確かにある程度の身分があって財力があれば一人以上の妻を娶るのも可能とされてるけど――
「勿論その中にはロット、君も含まれてるからね」
「そ、それはお断りした筈です!」
「なぜだい? 破格の値段でこの店を買い君を迎え入れる準備は出来てるというのに」
ロットにおかしなアピールをするロイドだけど彼女は心底嫌そうにしていた。やっぱりこの男の一人よがりだったんだね……。
「そもそもお前に店は売らん勝手に決めるな。そして小僧にも最高の杖を作ってやる。そうすれば試験ではお前なんぞより小僧の方に注目が集まるだろうさ」
「……面白くない冗談だね」
ロイドの声のトーンが下がった。ワンが彼より僕を評価してくれているのが気に入らないようだった。
「奇遇だな俺も冗談は嫌いだ」
「つまり、お前の作った杖があれば出来損ないの水の紋章持ちでもそこそこ見られる程度になると、そう言いたいのか?」
「いい加減腹立ってきた。魔法でふっとばしていい?」
「気持ちはわかるけど店ごと吹き飛ぶからやめてください」
フィアが過激な発言をしたけどセイラが止めていた。ただ、ロイドの発言にはセイラもイラッと来てるようだよ。セイラのあんな顔初めて見たかも……。
「勘違いも甚だしいな。小僧の力は元より高い。膨大な魔力に手持ちの杖が耐えられなかった程にな。だからこそこれまでは本当の力を発揮出来なかったと言えるだろうさ」
そこまで言ってワンがフンッと鼻息を強く吹き出し続ける。
「だが素材もそろった。今度はこの俺が小僧の為に完璧な杖を仕上げて見せる。それで小僧の水魔法はより完璧になる。お前如きじゃ逆立ちしたって敵わない程にな」
人差し指を突きつけワンが言い放った。そこまで言われるとなんだか恐縮です。
だけど――負けたくないとは思う。もっとも試験は合否が大事で勝ち負けを競う場でもないんだろうけど。
「ふ~ん。面白い。そこまで言うならどうかな? 次の試験でお前の作った杖を持っていながら、もしこの男が試験に合格出来なかったら――この店を大人しく明渡しロットも僕が貰う。そっちの仲間も僕が貰うそれでいいよね」
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