第120話 巨大な蛇の正体

『…………』


 えっと、僕たちは今巨大な蛇に見下ろされています。さっきの化け物と比べるとなんというか穏やかな顔つきだけど、只者じゃないのは確かだよね。


『――アペプを倒しこの地を元に戻したのはお前たちか?』


 改めて巨大な蛇が聞いてきたよ。話の流れでいくとアペプというのがあの化け物の名前なんだろうか。


 そしてよく見ると胴体に何か小さな翼のような物が生えていた。ちょっと可愛く感じてしまったのは内緒だよ!


「そ、そうよ。と言っても殆どそこのネロとセレナのおかげだけどね」

「そんな皆の協力あってこそですよ!」


 蛇の質問にフィアが答えた。同時に僕とセレナが貢献者みたいに伝えていたけど、皆がいてくれたからこそあの化け物が倒せた。

 

 それは間違いないよ。


『――なるほど。そしてネロとセレナというのは?』

「え、えっとネロは僕です」

「スピィ」

「セレナは私です」

『――ふむ』


 大きな蛇が僕とセレナを交互に見て納得したように顎を下げた。


『――ならばまずは礼を伝えねばならぬな。我はケツアルカトル。このあたり一体を任されし守護者である。此度は話が主の為に働いてもらい誠に感謝する』


 そう言ってケツアルカトルが柔軟そうな首を動かして頭を下げてくれた。


 守護者って何か物凄そうな蛇だよね。何だか恐れ多いよ。


「い、いえいえ! それにそのアペプを倒したのはたまたまですし!」

『ふむ。たまたま、か。しかしネロといったな。そなたの手に見えるは水の紋章と賢者の紋章。それであればこの働きも納得できるというものか』


 え! それって――


「僕のこの紋章が視えているのですか?」

『勿論視えておる』


 ケツアルカトルがあっさりと答えた。これは僕にとっては重要なことだ。


「もしかして賢者の紋章が何かもしってますか?」

『――この世の理を知った者に浮かび上がるとされる。そなたの場合は水の紋章であるからな。まさに賢者の紋章を宿すに足りる存在と言えるだろう』


 ケツアルカトルの話につい前のめりになって聞いてしまう。


「その、少なくとも現状は水の紋章持ちはあまり良い扱いを受けてません。それなのに何故?」

『――今のそなたなら理解できるのではないか? 同時に感じ取れる筈だ。何故ここまで水が軽視されているのかその違和感に――』


 ケツアルカトルが静かに語る。言われてみれば今の僕からすれば水は可能性に満ち溢れているとも言える。


 それなのに何故こうも扱いが悪かったのか。何より僕でも気づけた水の重さについて何故誰もが無関心だったのか――考えてみれば奇妙なことばかりな気がする。


「ちょっとあんたさっきから勿体つけた言い方ばかりよね。もっとはっきり答えてくれてもいいじゃない!」

「ちょっとフィア失礼よ!」


 僕の隣に並びフィアが堂々と意見を言った。セレナが慌てているし僕も焦ったよ!


『――賢者の紋章を持つならば自らの頭で考え動き答えを導きださねばならぬ。それが宿命なのだ。すまぬな』


 再びケツアルカトルが頭を下げた。最初はちょっと怖い気もしたけど話してみると穏やかだしすごく礼儀正しく思えるよ。


「あの、実は私もネロの紋章が視えるようになったのですがそれも理に触れたから、なのかな?」


 今度はエクレアがケツアルカトルに問いかけた。ふむ、と一つ唸りケツアルカトルがエクレアを見る。


『――雷の紋章か。それであれば水の理に触れられたのも納得できるか。きっと何かに気づきそれを実現したのだろう』


 答えを聞きエクレアが自分の紋章に目を向けた。


「確かにそうかも。それならやっぱり私とネロの相性(紋章の)はピッタリだったんだね!」

「えぇ!」

「スピィ♪」


 エクレアが僕の手をギュッと握ってきて喜んだ。ぼ、僕はなんて反応すればいいの!?


 いや、勿論属性的な意味だとわかってるんだけど、てあれ? 急にフィアが僕の腕を組んで来たよどうして!?


「ちょっと貴方! それなら私とネロの相性はどうなのよ!」

『む? いや、私は人の色恋沙汰にはうといのだが……』

「ば、馬鹿じゃないの! 紋章のことよ!」

「ちょ、フィアだから失礼だってば!」


 何かフィアがとんでもないこと言ってる気がするけどエクレアとフィアに挟まれて何か考えがまとまらないよ~――

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